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『ベートーヴェンの生涯』 ロマン・ロラン

 ロランによるベートーヴェンの伝記部分と、ベートーヴェンと友人達の手紙のやりとり、ベートーヴェンの思想断片、そしてベートーヴェン記念祭でのロランの講演、いくつかの角度からベートーヴェンについて書かれている本。ただ、ロランの愛情たっぷりで少し偏っているかもしれない。
 『ミケランジェロの生涯』と同じく、悲劇的な側面を大きく取り上げている。ベートーヴェンが生み出した曲の裏側にある苦悩。彼を最も苦しめたのは音楽家には致命的な耳の病気。それに立ち向かう力強い姿と、孤独のうちで苦しむ姿。筆不精なベートーヴェンが友人に送った手紙から、苦悩が伝わってくる。
不幸な人間は、自分と同じ不幸な者が自然のあらゆる障害にもかかわらず、価値ある芸術家と人間との列に伍せしめられるがために、全力を尽くしたことを知って、そこに慰めを見いだすがよい!p.110『ハイリゲンシュタットの遺書』
 ベートーヴェンは自分の障害を乗り越え、曲を残すことによって、他人に役立ちたいと考えていたという。そしてその曲たちは現代までその役目をしっかり果たしている。ベートーヴェン歿後100年の記念祭(ウィーン)でのロランによる講演の一節。
この勝利は孤独な一人の人間のもののみにとどまらない。それはまたわれわれのものである。ベートーヴェンが勝利を獲得したのはわれわれのためにである。彼はそのことを望んだ。p.172『ベートーヴェンへの感謝』
ベートーヴェンの人生は苦悩に満ちながら、その性格には傲慢とも取れるほどぶれない部分もある。ゲーテと一緒に(これだけで興味深い)歩いていて、大行家一行とすれ違ったときの2人がそれぞれとった対照的な態度のエピソード(p.50)がおもしろい。その性格を表すのに、“不羈(ふき)”という言葉が何度か出てきたのに個人的に“おっ”と反応した。でも一番しびれたのは『第九交響曲』が生まれるエピソード(p.63-68)。初演では聴衆が泣き出すほどの感激を巻き起こし、演奏会のあと、ベートーヴェンは感動のあまり気絶したという。まさに歓喜の瞬間。悲劇のうちから歓喜を造りだした、熱い生涯。
「悩みをつき抜けて歓喜に到れ!」p.75
 ベートーヴェンについて、もっと知りたくなる。


by yuzuruzuy | 2011-05-17 18:21 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


by yuzuruzuy

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