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『みなさん、さようなら』

この前先行上映に行ったものの、体調不良により途中でさようならしてしまった映画。
もう一回観に行った。ぶっ倒れて少し迷惑かけたとこには行く気になれず、別の劇場で。

先行上映の時には中村義洋監督と主演の濱田岳が登場して、ちょっとばかし話をきいた。
『アヒルと鴨のコインロッカー』など、何度も映画でタッグを組んできた二人。
兄弟か親子みたいな自然な感じで、和やかだった。
上映前の舞台挨拶だったので、上映後ならもっと深い話も聞けたのだろうか…
って言うとる私は上映後までロビーで寝転げていたのだったな。
上映前に聞けて良かったと思うしかない。

濱田岳演じる渡会悟は、小学校を卒業したまま、一生を団地の中だけで生きると決めた。
団地の中だけで描かれる悟の20年間。
変化していく周りの環境に負けることなく、恋愛も就職も、様々なことを自分なりに、
団地の中だけで経験して悟は大人になっていく。

なぜ悟が団地から出なくなってしまったのか、それが明かされたときから、
一風変わった男の青春の物語は一転、徐々に重い空気感を漂わせ始める。
それでもシリアスな中にくすっと笑えるコミカルな部分が挟まれていて、毒と良薬を繰り返し飲まされるような感覚を味わった。

終盤までは実質二度目だったが、二度目もしっかり入り込んだ。
見終わった後、またすぐにでも観たいと思った。

監督の話によると結構好き嫌いが分かれる映画らしいけど、
自分は期待以上に好きな映画になった。

おすすめ。




《以下、ネタバレありの感想殴り書き》

とにかく浜田岳のための映画だった。
12歳でも30歳でも自然に見えてしまうってどういうこっちゃ。
波瑠っていう女優は以前TVで東野圭吾のミステリードラマで見て覚えていたけど、
陰があるような切ない演技がすごく良いなと思った。
倉科カナは、言葉は古いが全力でマドンナ、男のハートを鷲掴みな感じ。
たびたびグッとくる台詞をぶっ込んでくるからたまらない。
この二人から好かれるなんて…。
それにオカマ役の永山絢斗が絶妙なスパイス。
主人公のよき親友ながら、最後は精神病になってしまうという、まさに毒を飲まされる役回りで、
この映画になくてはならない人物。あだ名、オカマラス。
母親役は大塚寧々。女手ひとつで悟を支え、見守る姿が優しすぎて聖母のよう。
最後の手紙には涙しそうになり、その母の思いを知ったうえで悟の成長を振り返るとさらに感動。
そんで田中圭はまさかの純粋な悪役。
良い人そうな風貌から溢れ出す悪意が凄まじい。
21世紀少年のケンジの子役、これには二回目で気づいてあっと思う。

個人的な趣味で言うと、
途中で流れる挿入歌と、エンディングの主題歌がエレカシで、どちらのシーンも鳥肌もの。
そして悟が失恋して慰めの席で卓上に置かれていたのがJack Daniel's。
これには二回目に気づいたが、自分も思い入れのある酒に密かに興奮。
悟が働くケーキ屋の師匠(ベンガル)が店を悟に託して去った場面の詩が、
“花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ”
寺山修司の著書で知った、自分の好きな言葉のひとつ。
井伏鱒二の言葉だったかな?映画のタイトルともリンクしていて名場面。

一年ごとに団地を去っていく同級生を最初の107人から引き算で引いていく演出や、
大きくなった同級生たちを卒業アルバムの似顔絵とあだ名と将来の夢で照らし合わせる演出に、
過去の思い出を守り続ける悟の価値観がとても良く顕われていた。

ラストシーンは、遠く小さくなっていく悟を、誰もが目で追ってしまう。
悟はこれから、どこで、何をして、どのように生きていくのか?
悟が団地の中で、団地の仲間たちに対して感じていた思いを、
いつの間にかこちらが悟に対して抱いていた。


まずい、まとめきれない。
団地という小さな世界で、抱えきれないほどのことを感じさせる映画だった。


原作本も読んでみようかな。
それから映画もまた観たいと思う。
# by yuzuruzuy | 2013-01-28 23:58 | 映画

心遣い。便器ブラシから傘かしげ。

日付変わるまで残業したとはいえ、一日働いただけでこうもぐったりなるものか。

昨日のダメージが残っている。

身体だけでなく精神的にもやられてしまったようだ。

閉店前のトイレ掃除中、便器用ブラシのケースから漏れた水が靴に掛かって靴下にしみて来て、イラッとした。

使用後ケース入れる前になんで水気切っとかんのじゃこら。

…コホン、失礼。

こういうのうんざりする。疲れてるときとか尚更。

次の人のことを考えた、ほんのちょっとの心遣いが出来てないとき。

ちょっと便器ブラシは細かすぎるかな。

逆にそんなちょっとの心遣いは、出来てても、当たり前すぎてなかなか気づかれない。

でも誰かのそんな細かな心遣いに気づいたときから、自分も他人に対して同じような心遣いが出来るようになるのだと思う。

雨の日に傘同士ですれ違うとき、相手がクイッと傘を傾けてくれる、その瞬間がなぜだか無性に嬉しくて、僕は自分が少々濡れようが、傘が相手の傘とぶつからないようにしっかり傾ける。全く傾けようともせず突っ込んで来る人には思わず回転水しぶきフラッシュをお見舞したろかと思うが、堪えて相手の分まで傾ける。それでも気づかんとか一体そいつの神経どうなっとるんじゃ、回転水しぶきフラァーッシュ!アンード、便器ブラシで水ペッペッペー!!

…コホン、取り乱しました。

調べてみると、この傘を傾ける行為は“傘かしげ”と言って、江戸しぐさ、つまり江戸時代のマナーとして今に伝わる奥ゆかしい心遣いらしい。

江戸しぐさ、面白そうだな。

便器ブラシの愚痴で終わるつもりが長々と脱線してしまった。
まあ昨日の精神的ダメージのせいにしておこう。勉強になったし。


はあ、それにしても弱った。

弱った弱った酔わないウメッシュ。

週末だけど禁酒。

酔わないウメッシュも飲まない。

プロテインを溶かして牛乳を飲む。


明日は珍しく日曜休みだ。

元気出そ。
# by yuzuruzuy | 2013-01-20 01:21 | 独り言

最近の読書まとめ

『宿屋めぐり』町田康
 700ページ超の大長編。これを読みきってからまた読書脳が再活性化された感じ。主人公、鋤名彦名の独白形式。“主”に命じられた大刀奉納の旅の道中、くにゅくにゅに飲み込まれてはじまる苦行のような日々。自分の都合の良いように言い訳ばかりして、どんどん落ちぶれていく。結局残るものは何もなかった気もするが、読み終わった後の感覚が忘れられない。


『何もかも憂鬱な夜に』中村文則
 ピース又吉おすすめの本。三時間くらいで一気に読んだ。施設で育ち、刑務官となった主人公、自分とはかけ離れた設定ながら、自分も少なからず思春期〜青年期に抱えた苦悩をこれでもかとぶつけられて、最後には勇気をくれる。生きることに悩んでいる人に読んでもらいたい小説。


『赤目四十八瀧心中未遂』車谷長吉
 二年ほど前になにかの繫がりで飲んだ人から、文章が凄いと勧められた小説。確かに凄かった。これを読んで以来、そこらの文章が味気なく感じるほど、一度味わったら忘れられない濃厚な文章。予想外な終わり方も好き。


『間抜けの構造』ビートたけし
 いろんな意味での“間”の大事さについて。間をうまく感じ取り、うまく使いこなせる人間になりたいと思った。勉強になる。


 本当は一冊ずつしっかり感じたことを書き残したいのだけれど、なんせ時間もないし、内容が重いものばかりで、読むので精一杯。もっともっと、本を読もう。

# by yuzuruzuy | 2012-12-01 01:56 | 読書

『すべて真夜中の恋人たち』 川上未映子

 文章なのか何なのかよくわからないけど、何とも言えない儚さを漂わせるタイトル。以前読んだ『ヘヴン』よりも文章が深くしみ込んできて、こっちの方が好きかな。“真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。”こんな一文から始まる最初の1ページで、物語の世界観に引き込まれる。
 主人公は、書籍の校閲を職業とする30代半ばの独身女性。ふとしたことから勤めていた会社を辞め、フリーランスで働き始める。孤独な生活のなかで、ある男性を好きになってしまうというストーリー。繊細な文章と、交わされる会話のやりとりの奥深さが印象的。光についての会話の部分が特に良かった。主人公がもらったCDがショパンっていうところも。
 登場人物たちはみなどこかしらに孤独な部分を抱えていて、そのひとつひとつに優しい光を当てるような小説だと感じた。タイトル通り真夜中に静かに浸るのにぴったりの一冊だと思う。


# by yuzuruzuy | 2012-11-13 00:10 | 読書

『のぼうの城』 和田竜

 結構前から読もうと買ってはいたのだけど,ようやく読んで映画も観てきた。
 小説は一気に読んだ。一番良かったのは、戦を経験したこともないのに軍略の天才だと豪語した若武者が、自分の策で見事に敵を打ち負かし、敵の総大将三成から賛辞の言葉を受け、はらはらと泣くシーン。思わずもらい泣きしそうになった。命がけで対峙した相手からの賞賛の言葉というのは、どれほど価値があるものか。のぼうはもちろんのこと、それぞれのキャラクターが生き生きと描かれている。戦国時代ってのはこんなにも清々しい男たちが生きた時代だったのだろうか。時代小説は現代にない価値観を与えてくれてやはり面白い。
 映画は戦と水攻めのシーンなど小説のイメージ以上の大迫力。ただ先に触れた自分の好きなシーンがなく残念。それでもエンドロールの演出にハッピーな気分。主題歌はエレカシ。劇場で観てよかったと思う。


# by yuzuruzuy | 2012-11-10 00:01 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


by yuzuruzuy

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