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『きいろいゾウ』 西加奈子

 お互いをツマ、ムコと呼び合う夫婦の物語。過去に縛られて、いつもどこか遠くを見てしまっていないか。ちゃんと地に足を付けて、目の前を見つめて生きているか。そんなことを考えさせられた。『きりこについて』にも通じる、入れ物である体と、中身である心の乖離がテーマのひとつとして存在している。現実と向き合い、地上に降りるというモチーフからは、『炎上する君』の、風船病の話も思い出す。
 この人の作品は登場人物に語らせて引き込むのが巧いと思った。地の文はツマの語りと、それを最後に要約するようなムコの日記。直接語りかけてくるような、自分だけがこっそり聞いているような感覚になる。大地くんの手紙がとても感動的だった。
 今回はユーモアは若干お預け。現実と御伽噺が合わさったような完全な世界観は本を閉じてもしばらく抜け出せなかった。解説で、カタカナの名前が小説の構成にもたらしている効果を知ってから唸った。改めていい作家、西加奈子。
 子供のような大人たちのための、絵本のような小説。この小説を読み始めて、月をよく見るようになった。


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by yuzuruzuy | 2011-12-11 15:38 | 読書

『きりこについて』 西加奈子

 きりこは、ぶすである。

 そんな一行からこの物語は始まる。そしてきりこがどれほどのぶすであるか、家族の容姿にまで言及しつつ、約4ページに渡る説明。ここですでにもう、わしづかみ。
 そしてきりこと会話のできる賢い猫、ラムセス二世が搭乗。本当に搭乗、そう書かれている。誤植?と思いきや、筆者が興奮のあまり間違えたというエクスキューズ。なんでも“知っている”ラムセス二世の台詞に、何度も笑う。
 なんとも面白い、コメディかなと思いきや、物語はどんどんと、感動のヒューマン&キャットドラマになっていった。
 家族から可愛い可愛いとお姫様のように育てられ、それを当たり前のように生きてきたきりこが、ある出来事をきっかけに、自分がぶすであることに気づく。衝撃的な冒頭の一行のせいもあってか、その瞬間はまさに、『人間失格』の葉蔵が、目立たない一人のクラスメイトから、道化を見抜かれた、あの瞬間を思い出させた。それでも、きりこは負けなかった。負けないきりこに、周りのみんなが励まされていく。そんな場面を読みながら、電車の中で、喫茶店で、何度もホロッときた。

「うちは、容れ物も、中身も込みで、うち、なんやな。」
「今まで、うちが経験してきたうちの人生すべてで、うち、なんやな!」
これはかなりおすすめです。


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by yuzuruzuy | 2011-12-05 22:06 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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