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『八日目の蝉』 角田光代

 “最後の数ページ、震えがとまらなかった。”爆笑問題太田のコメントが載った帯が目に留まり、数年前に気になりながらも、かさばる単行本なので読んでいなかった。記憶の隅っこで待っていたその小説の文庫版を古本屋で手に取った。帯は自分の誕生日から上映される映画の告知になっていた。“優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。”この新しい帯のワンフレーズだけで、迫ってくるものがある。
 物語は大きく2章に分かれていて、1章は主人公である誘拐犯の女の手記のように描かれる逃亡劇。疾走感のあるストーリーにとても引き込まれた。子育ての希望に溢れた平和な日々の風景と、いつそれが失われるかも知れないという不安が生む緊張感がある。特に何度もある逃亡シーンで、犯罪者であるはずの女に感情移入してしまう奇妙な感覚。犯罪者に母性を託すことで、親子愛、善や悪について違った角度から考えさせられた。特にエンジェルホームからの逃亡や、突然やってくる別れのシーンは言葉にならない。
これから私があなたに全部あげる。今まで奪ってきたものを全部返してあげる。海も山も、春の花も冬の雪も。びっくりするほど大きい象も飼い主をずっと待つ犬も。かなしい結末の童話もため息の出るような美しい音楽も。(p.157)
 2章では誘拐された女の子の現在が、事件のあった過去と繋がっていく。1章の手記のような形式とは全く違った描かれ方。
1章で読者に知らされた過去と大学生になった女の子の現在。そのふたつの隙間が埋められていくうちに、またしてもぐいぐい引き込まれる。そしてふたつが重なり合って生まれてくる未来への希望に、ページをめくる手が止まらなかった。
「海と、空と、雲と、光と、木と、花と、きれいなものぜんぶ入った、広くて大きい景色が見えた。今まで見たこともないような景色。それで私ね、思ったんだよ。私にはこれをおなかにいるだれかに見せる義務があるって。──もし、そういうものぜんぶから私が目をそらすとしても、でもすでにここにいるだれかには、手に入れさせてあげなきゃいけないって。だってここにいる人は、私ではないんだから」(p354)
 橋渡しとなる役目を果たす女性にも、“そう来たか”と思わされる。ラストシーンも、いい意味で期待を裏切ってくれた。

 本当の親子愛、母子とは何であるか。登場人物はほとんど女性で、男は駄目な奴らばかり。“自分のお腹を痛めて生んだ子”という感覚は男の自分には一生理解できないもの。しかしそれ以外の、別の親子の関係というのもあるんじゃないかというところに、男の自分でも共感できる部分があった。子供を持つ女性として読んだとき、どのようなことを感じるのだろう。

何の説明もないまま敢えて最初に固有名詞を出して、徐々にばらしていく書き方が巧く、何様目線だけど、これが小説家かと思い知らされる。力強い文章はページをめくる度に鳥肌が立ってしばらく戻らないほど。まるで自分が生きてきたこの世界のどこかで、本当にあった事件に思えてきた。同じように自分が生まれた80年代半ばと、今生きている現代が交差する作品、『クライマーズ・ハイ』を読んだときと同じようなリアルな感覚。なかなか出会えない小説だと思う。
「八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどに、ひどいものばかりでもないと、私は思うよ」(p.343)
 早速映画も観に行こうと思う。


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by yuzuruzuy | 2011-04-30 19:25 | 読書

『100語でわかるワイン』 ジュラール・マルジョン

 100語でわかる、ほどワインの世界が浅けりゃ楽なもんだけど、そう簡単にはいかない。著名なソムリエが選んだ、ワインを味わうための100の用語について説明した本。辞典のような、ワインの小ネタ集と呼ぶべきか。ワインの基本的な用語もあれば、葡萄栽培や醸造についてのかなり専門的な言葉も出てくる。この前読んだ、『ワイン上手』に重なる部分も多く、一緒に精読することで“ワイン愛好家”と自称できるくらいの知識はつきそう。ワインのコンクール受賞のメダルについての見解とか、ちょっと皮肉を利かせた、クセ者的な著者の視点も好きと言っていいでしょう。ただのワイン好きからもう一歩、深みにはまるきっかけになりそうな1冊。


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by yuzuruzuy | 2011-04-26 18:18 | 読書

誰かの夢と自分の夢と

飛び込みたいと思える場所がある。

敷居は高そうだけど、今ある限りの力を振り絞り、飛びついてやるしかない。

ホームページのBrand Policy(経営理念)を、

原稿用紙に書き写してみる。

その仕事に賭ける情熱が伝わってくる。

どれだけ自分の夢と重なるか。

自分も同じような情熱を持ってやっていけるのか。

書き写したのはまだ半分くらい。

自分がすべきことを、この文章から読み取ること。

まずは相手の気持ちを十分に受け止めて、

それから自分にできることを考えて、伝える。

これまで学んできたこと、今こそ生かすのだ。


とは言ってみたものの、

望めば望むほど臆病になっていく弱虫です。

まるでフジファブリックか、いつかのミスチルの曲の登場人物です。

少々無様になってもいいや。

ヘコタレズニススモウ。



でも流したくなったのはなぜだかスピッツ。

草野マサムネ、震災のストレスの影響で、

ぶっ倒れてたみたいだけど、復活したようだ。

ぶったおされても立ち上がり、

ときには抜け穴に逃げ込んで、

この曲みたいな感じでいきたい。
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by yuzuruzuy | 2011-04-25 02:26 | 日記

『(知識ゼロからの)ワイン入門』 弘兼憲史

 島耕作シリーズの漫画家によるワイン入門書。古本屋で見つけて、いかにもとっつきやすそうだったのでノートをとりながら読んだ。ワインの初歩の初歩という感じで堅苦しさもなく、さらっと読める。ノートをとってワインショップに出かけてみると、以前よりも店員さんと少しは話せるようになった。あとがきで筆者も述べているように、グラスを傾けながら拾い読みするのにも最適な本だと思った。漫画の部分も息抜きになるし、島耕作シリーズの良い宣伝だ。ワインの楽しみを分かり易く教えてくれる一冊。


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by yuzuruzuy | 2011-04-24 03:28 | 読書

『真夜中の虹 / 浮き雲』

アキ・カウリスマキ監督の2作品を収録したDVD。

『真夜中の虹』
炭鉱が閉鎖され仕事を失った男が、自殺した仲間から譲り受けた車で旅に出るところから始まる。
途中で有り金を奪われ、行き着いた街で犯罪者になってしまう。
同じ監房の男と脱獄し、そして新しくできた家族と国外逃亡をはかる。
脱獄シーンはジム・ジャームッシュのダウン・バイ・ロー』を思い出させた。
監房で出会う男役の俳優は、自分の一番好きなジャームッシュ映画『ナイト・オン・アース』のヘルシンキ編に出演していた。カウリスマキとジャームッシュ、やはりつながりがあるようだ。
ストーリーとは裏腹に静かでローテンポな映画。

『浮き雲』
何をやってもうまくいかない人たちの物語。
トラムの運転手だった夫は赤字路線の廃止でカード引きで負けたという理由でリストラ。
レストランの給仕長だった妻は店がチェーン会社に買い取られて職場を失う。
お互いに職を探すも、うまくいかない。
同じように、妻が働いていたレストランの仕事仲間たちも、次の職にあり付けないでいた。
夫婦が悪戦苦闘する様子がほとんどだけど、見ていて飽きることはない。
ドン底なのに落ち着き払っているこの監督の映画の登場人物たちはもうお馴染みにもなってきた。
巻き起こる出来事と彼らのリアクションの薄さのギャップに笑ってしまいそうになるシーンもある。

希望が込み上げてくるラストは名シーン。
いつか、うまくいく。
やけに説得力のある無表情で、そう思わされる。
好きな感じの映画だった。

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アップリンク


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by yuzuruzuy | 2011-04-23 19:52 | 映画

『過去のない男』

片桐はいりの『わたしのマトカ』で名前を知ったフィンランドの映画監督、アキ・カウリスマキの作品。
2002年カンヌ国際映画祭グランプリ作品

ヘルシンキにやってきた男が暴漢に襲われ記憶を失ってしまう。
名前も分からず身の上を証明するものもない男は、海辺のコンテナで暮らし始め、救世軍の女に恋をする。

結構好きな雰囲気重視の映画。
北欧の景色と音楽がとても穏やかな気分にさせる。
『かもめ食堂』はこの映画から影響を受けているなと思った。
登場する女性に少し暗い過去があるのだけど、前向きに、でも無理せず生きようとしている。
フィンランドには人をそんな気持ちにさせる空気があるのかも知れない。

アキ・カウリスマキ監督は日本の小津安二郎映画が好きらしい。
そのためか、ジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワー』やヴィム・ヴェンダースの映画に通じるものがある。
ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』も思い出すし、そこら辺の映画が好きな人にはおすすめ。

映画全体的に、登場人物はどんな状況でも無表情でほとんど笑わず、少ない台詞も棒読みのように聞こえる。
『わたしのマトカ』で書かれていた、感情をなかなか表に出さないフィンランド人そのもの。
これがこの監督の映画の特徴のようだ。
音楽では“イスケルマ”と呼ばれるフィンランドの歌謡曲とR&Rを合わせた独特のもの。
監督が日本好きなのか、クレイジーケンバンドの音楽をBGMに列車内で男が日本酒片手に寿司を食べるシーンもあった。なんとも言えないシュールなシーンで必見。


感情がなかなか読めないから、一度見ただけじゃなかなか分からない。
でも雰囲気が好きだから何度も見てしまう。そのうちに深みにはまる。
フィンランドもきっとそんな国なのだろうな。

記憶がなくても心配ない
人生は後ろには進まん
進んだら大変だ


無表情で男にとても親切にしたり、くさい台詞を言う人々。
分かれるときも何の名残り惜しさもなく、同時に振り返りスタスタと立ち去る。
銀行強盗のシーンでも貫かれた無表情にはこちらが笑いそうになった。
クールを通り越してコールド。でも、寒さを知らなければ暖かさも分からないのだ。

男が預かる警備員の飼い犬、ハンニバル(食人鬼)がとてもいい。

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by yuzuruzuy | 2011-04-22 15:48 | 映画

『グアテマラの弟』 片桐はいり

 片桐はいりのキャラクターと文章にすっかり引き込まれ、古本屋で同時購入していた2作目もすぐに読んでしまった。平和な雰囲気漂うフィンランドが舞台だった『わたしのマトカ』に比べ、今回の舞台、南米のグアテマラでは放っていたって何か起こる。片桐はいりのキャラ以上に、周囲の景色や人々が強烈なエッセイ。
 前作同様文章も表現豊かで、南米の色彩鮮やかな情景が文字を通してあふれ出してくる。このエッセイでは、題名の通り、片桐はいりの弟など、これまた個性豊かな家族たちが登場してくる。彼らを冷静に、かつ愛情深く眺めながら、ユーモアたっぷりに書く文章は、読んでいて笑えるし、心が温まる。
 それにしてもグアテマラで何の気なしに暮らす片桐はいりの弟はすごい。もしグアテマラに行く機会があれば、会わない手はない。姉も姉で、短い滞在期間で、現地の暮らしと人々に、ものすごくなじんでいる。
 特に好きなエピソードは、“歯ブラシとコンピューター”、“トイレとロダン”、“前世と宇宙戦争”、“物乞いとアミーゴ”、“たばこと神様”、“甘い水と苦い水”など、これまたほぼ全て。前作同様、再読必至。歯ブラシとかタバコなど、小道具を巧みに使った文章表現は、役者ならではだし、独特の比喩表現やドラマかコントみたいなストーリー展開も見事。食べ物に関する味覚的なボキャブラリーや、豆知識も豊かで勉強になり、本当に尊敬するしかない。
 片桐はいりの旅番組なんて、やってくれないかなぁ。次の旅のエッセイにも大いに期待しています。


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by yuzuruzuy | 2011-04-21 22:30 | 読書

『教祖誕生』

ビートたけし原作のものすごいタイトルの小説の映画化作品。
監督はしていないが重要な役で出演している。

ひと昔前の作品のせいかチープな雰囲気は否めないのだが、逆に新興宗教の胡散臭さがにじみ出ているし、主演の萩原聖人、団体幹部のビートたけし、岸部一徳をはじめキャストも抜群。ニセ教祖のじいさんがいい味出してる。玉置浩二の役どころは原作のイメージと違いすぎて失笑。しかし演技は原作での役のイメージを変えるくらいに良かった。

新興宗教の様々な面を皮肉った作品で、原作を以前読んでいたためテンポが良いとも感じたが、
初めて映画で観る人にはドタバタして少し薄っぺらく感じるのではないかというのが正直な感想。
宗教とは、神とは何なのか徹底的に考えさせる原作のほうがおすすめ。
特に原作では冒頭の、「イヌ鷲と山鳩」の話が重要な前置きとなっていたので、映像化は難しいだろうけれど省かれていたのが残念。

ビートたけし演じる、金のために教団を操る幹部・司馬の台詞がそのままたけしの宗教観なのかもしれない。
「神様ってのは、人間の創造したさ、創造物の一番のものだと思うよ。あるのかないのかは分かんない。」

なんとなく入会し、なりゆきで新教祖になってしまった主人公の和夫(萩原聖人)が次第にその気になり断食してる間、幹部の司馬は豪華な飯を食って、和夫に差し入れまでするシーンが象徴的。
一方で真面目に信仰し続け写経したり教団の曲を歌う駒村(玉置浩二)もいて、それぞれの価値観で教団にいる。個人の価値観まで画一的にしようとする新興宗教への風刺ともとれる。

「どうして教祖になるとみんなその気になっちゃうのかなぁ。」
「2週間の断食で神様になれるぐらいなら、山で遭難したやつはみんな神様になっちゃうよ。」

金、権力の亡者と呼ばれようが司馬の論理は揺らぐ事はなく、
駒村の純粋な信仰心もその鉄壁を前にしてなす術がない。


駒村を刺してしまった後の司馬と和夫のやり取りがとても意味深。
和夫「罰が当たったんです、神はいるんです。」
司馬「やっと神の影が見えたってことかな…」
和夫「あなたは…こんなことでしか神に近づけないんですか。」
司馬「和夫、お前どこで変わっちゃったのかな…」

一見同じ“神”でも、ある人にとっては救ってくれるものになり、ある人には金儲けの道具にもなってしまう。

ここで原作からも引用。「イヌ鷲と山鳩」の話に続く文章。
人間って不思議な生き物だ。誰もが悲しみに沈むってこともないし、誰もが喜びに舞い上がるってこともない。ひとつことに対して、立場が違えば意味がまるで違ってくる。神はいったいどの立場に立っているんだろうか。


映画はこんな台詞で終わる。

“多くの、インチキな新興宗教がまかり通るこの時代に、いったい、真の宗教とは何であるか、そのことをもう一度、みなさん考え直していただきたい!”

これを、出所してもまったく変わらず再び宗教をやり始めた司馬に言わせるオチは、まったくビートたけしらしい。
テーマが宗教だからといって身構えず、コメディとしてみるべし。
それから考えたい人が、考えれば良いのだ。

エンディング曲もぶっ飛んでる(笑)
こういう映画、これからは生まれないような気もするなぁ。

教祖誕生 (新潮文庫)

ビートたけし / 新潮社


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by yuzuruzuy | 2011-04-20 00:58 | 映画

カタシモワイナリー見学

ワインが生まれる現場を見たくて訪れたのは大阪の柏原市の老舗ワイナリー。

JR柏原駅で電車を降りると東側の山に“柏原ワイン”という大きな看板が立っていた。
葡萄の産地だけあって、マンホールや用水路の壁などに、葡萄の装飾が目立つ。
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懐かしさの漂う小道を少し迷いながら、回り道をして受付の建物に到着。
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右手の階段を上がるとバーカウンターになっていて、ここがテイスティングルームのようだ。
(写真は試飲終了後。さりげなく社長を撮った。)
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アンティークの自動オルガンから粋なクラシックが流れていた。
昔のワイン製造に使われていた、木製の機械も並んでいた。
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案内をしてくれるであろう社員の男性は、働き始めて一年ほどで、それまではワインとは関係ない仕事をしていたという。
自分もワイン関係の仕事を探していると話すと、ここでも募集しているけど、かなり敷居が高いとか。
葡萄づくり、ワインづくりも職人の世界。かなりの修行がいるだろう。

見学者は自分を含め10人ほどで自分はやっぱり下っ端。
参加者全員が揃うまで、案内係さんがこのあたりの歴史やワイナリーについて話してくれた。
奈良の平城京と難波の中間に当たるこの町は、かなり栄えていたこと。
所在地の住所でもある太平寺という寺にあった廬遮那仏を天皇が見て、奈良の大仏が建立されたこと。
智識寺という古い寺では葡萄を模したオブジェが発見されていて、古くから葡萄の栽培が行われていたであろうこと。
大阪の葡萄の生産は昔は全国一位で、今では全国8位、デラウェアという品種に関しては全国三位だということ。
まだまだ知らない大阪がたくさんあるのだなぁ。

そして見学開始。
まずは葡萄園の見学から。
葡萄を有機的な土壌で育てるために、除草剤を撒かず雑草はそのままで、葡萄の木の下にタンポポが可愛く咲いていた。
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地面には他にも切り落とした枝を砕いたものや、発酵でできた酵母のかたまりなどがまいてある。
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有機農法では地面に棲むミミズも大きくなり、それを食べにイノブタが地面を掘りにくるという。
そのため農園の周りには防護ネットが張られていた。

葡萄の木はまだ素っ裸で、主に剪定(せんてい)についての説明があった。
どの枝を生かすか、どこに実を生らすのか、数年先を見越して枝を選り分ける重要な作業。
枝が国道で、実が建物。葡萄の木の栽培は街づくりと似ているという説明が印象的だった。
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70歳、90歳の古木もあった。

古い木は子孫を残すため、鳥に運んでもらうために美味しい実をつけようとする。
年齢にしたがって生産力はかなり落ちるのだが、より上質な葡萄を生む貴重な存在らしい。
幹をスカスカにしながら先端はまだ生きている古木は人生までも教えてくれるようだ。

ブドウ畑の丘からは、大阪の街並みから、六甲山まで一望できる。
造り手にとってこの景色を眺めながらのワインは格別だろうな。
葡萄が実をつけるころには、粒を味見できるそうだし、
そのときの景色を見にまた夏にも訪れたい。


ちょっとしたパワースポットめぐりの後、醸造所内を簡単に見学。
圧搾機や、瓶内熟成中のスパークリングワインと、保管庫内部を見た。
戦時中は保管庫にあったワインから、国によってレーダーに使用する酒石酸が抜き取られたため、
余った部分はブランデーにされたらしい。
ここでの見学は倉庫内の装置のみで、醸造中のワインを見れると期待した自分にとっては若干肩透かし。
でも良く考えたら季節的に見れるはずがない。僕のうっかりミス。
ワインは葡萄の出来が一番重要で、収穫時には既に醸造家の頭にその年のワインのイメージができているらしい。
なんか天才的なひらめきが必要そうにも思えるが、何よりも経験なのだろうな。
これが圧搾機。果汁と、果皮でそれぞれ出口が違う。農業マシーン!という存在感。
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そしていよいよお楽しみの試飲。
最初にも少し顔を出したが、試飲途中で満を持して…というよりももっと軽いノリで社長が登場。
社長様プッシュもありなんと八種類ものお酒をテイスティングできた。ありがたやありがたや。
簡単な印象をメモ。

①スパークリングワイン
デラウェア使用
さわやかで甘さもある。

②堅下甲州 合名山 白
門外不出だった山梨の甲州葡萄の苗木が明治11年に新宿御苑から送られこの地で栽培されて生まれた堅下甲州葡萄を使ったワイン。
香りはスモーキー、スパークリングよりも甘さは弱く、酸味がありスッキリした味わい。

③KING SELBY メルロ&マスカットベリーA 赤 
メルロ、マスカットベリーA使用
土っぽい、野花をイメージさせる香りと渋みのある味わい。
日本酒の製造方法が活用されており、樽は使用されていない。

④利果園 赤
マスカットベリーA使用
ベリーAの開発者川上善兵衛の古木の葡萄。
たとえは悪いけど、こどものころ小さい蟻をつぶしたとき手についた匂いを思い出させる香り。
古い日本家屋のような懐かしい香りもある。フレンチオーク樽を使用しているからだろうか。
日本で誰かワイン樽作ってくれんやろかーと社長がぼやいていた。
渋みが強くて、後味はほんのりチーズ。
これぞ日本の美味しいワインや!という感じで好き。

⑤太時 勇助畑 2009 限定675本
カベルネ・ソーヴィニヨン使用
社長プッシュで飲ませてもらった一本。
香りはスッキリとしたハーブとベリー。
口に入れた瞬間渋みがガツンときた。
コクがあって味わい深い。
社長によると、フランスのカベルネなのでまだまだ土地になじんでいないのか色づきがイマイチだという話。
外国の葡萄を日本に持ってきてもうまくいくとは限らないし、試行錯誤の繰り返し。
“お前誰やねん!”という味になることもしばしば。
十年以上経ってようやくその土地でしか出せない味になっていく。
毎年違うことをやっている、それが自分たちの仕事で、一番楽しいんやと熱く語っていた。

⑥赤ワイン梅酒
完熟した青梅をマスカットベリーAの赤ワインに漬け込んでできるお酒。
香りはプラム。
甘くて濃厚な味。お洒落な梅酒。

⑦ジャパニーズグラッパ 葡萄華 デラウェア葡萄・樽熟 
アルコール35度
グラッパとはイタリアのブランデーで、食後酒として飲まれている。
無色透明。香りが豊かなウォッカみたいな印象。
日本で一番最初にグラッパを造ったのがこの社長らしい。
10年かけてグラッパのための機械も開発したとか…職人魂だな。

⑧ジャパニーズグラッパ 葡萄華 堅下甲州葡萄
アルコール53度(!)
なんと限定211本、1本1万円もするこのボトルも、社長がせっかくやからと飲ませてくれた。
商売上手。大阪商人だなぁ。
アルコールが強いのに、葡萄の味も感じれる新感覚なお酒だった。
こんなん買って誰かと一緒にちびちび飲んでみたいな。

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テイスティングのあいだ社長自らワインづくりについて河内弁で熱く語ってくれた。
結構専門的で初心者の自分には難しかったけど、
酵母菌にまで愛情を持って語っていたりして、
とにかく自分の仕事が好きで、誇りを持ってやってきていることが伝わってきた。
ここまで賭けている人が造るお酒、不味いわけがないわ。
ベルギービールも奥が深いという話や、
お酒好きな人は観光ではなく、その土地の暮らしを味わいに行くから、
ワインを知ったら、旅行の型が変わるという話に共感した。
もっとワインについて知って、また話を聞きに来よう。
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by yuzuruzuy | 2011-04-17 20:12 | 日記

『わたしのマトカ』 片桐はいり

 以前から気になっていた片桐はいりの旅のエッセイ。“マトカ”はフィンランド語で“旅”。映画『かもめ食堂』の撮影で滞在したフィンランドでの体験が綴られている。
 片桐はいりのイメージが変わった。旅先で発揮される冒険心が引き起こす事件の数々。思わず声をだして笑ってしまうほどユーモラスで少しひねくれた文章。片桐はいりという唯一無二のキャラクターが一文一文からにじみ出てくる。目の前の景色をこんな風にオリジナルに受け止めて自分の言葉にできる人間になりたいと思った。
今時もう、文化の世界では二刀流どころではこと足らない。世界の国の人々と、わたしたちはたくさんの刀を使って遊ぶのだ。
──p.65“ヤルッコ、ヤッチマイナ!”

(現地のお酒サルミアッキ・ウォッカについて)まずいうえにアルコールが強い。ブスなうえに乱暴だ、と言っているみたいだ。─(省略)─だけどもし、ブスのくせに乱暴な女と懇ろになったら、逆に深みにはまるのかもしれない。
──p.18“舌の上のフィンランド”
 特に気にいった章は“舌の上のフィンランド”、“カンボジアの朝日。ヘルシンキの夕暮れ”、“クラブ「地獄」”、“ファーム・アローン”。面白いエピソードだけでなく、片桐はいりが感じた現地の生活文化が、日本と比較するなどして、とても分かりやすく書いてある。シャイなようで実は人懐っこいフィンランド人の気質と片桐はいりの相性はばっちりだったのかも。いや、本人も書いている通り、きっとこの人はどこでもひとりで生きていけるのだ。片桐はいり、面白い。旅先のどこかの飲み屋で偶然会ったりして、一緒に地元のビールでも飲んでみたい。
─でもわたしとしては、迷えば迷うほど心ときめくのである。地図を見る範囲が広がる。予想外の町を知ることができる。なによりとてもスリルだ。目的地につかなければ、また別のプランを考えれば良い。今までにもそうやって、偶然に発見したすてきな場所がたくさんあったから。
──p.30“路面電車に乗って”
 もろ同感…はいり姐さんって呼びたいくらいだ。フィンランドだけでなく、これまでの旅のエピソード(東南アジア、台湾など)や日本での出来事も散りばめられていて、どれも一瞬で読者をその場に連れて行くような、平易だけれどさりげなく知的な文章で描かれている。おすすめ。


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by yuzuruzuy | 2011-04-16 23:59 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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