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『ポケットに名言を』 寺山修司

 名言と呼べる言葉は人それぞれ違うし、その時々でも変わってくると思う。だからできるだけ多くの言葉をポケットに忍ばせて、いざというときの武器として、薬として持っておきたいな。そんなことを思いながら最近の自分にとっての名言を探しています。
 この本はそんな人生の友になりえるような言葉たちと、寺山修司の文章が合わさったユニークな名言集。気軽に読んでいくそのなかに、“世界全部の重さと釣り合う”ような言葉との出会いがあるかも知れない。
安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしてるときは生のよろこびを書きつづる。
──太宰治「晩年」

もし世界の終りが明日だとしても私は今日林檎の種をまくだろう。
──ゲオルグ・ゲオルギウ

花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ
──井伏鱒二「厄除け詩集」


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by yuzuruzuy | 2011-03-31 19:15 | 読書

我的家族

広島に着いてまず先に母と妹と一緒に、祖父が数日前から入院している病院に行った。ヘルパーのアルバイトをしている妹は、髪も黒くなり風貌が随分と大人しくなっていた。病院に着き、エレベーターで上がるとラウンジに父と車椅子の祖父の姿が見えた。祖父に「帰ったよ」と握手した。祖父はずっと手を握ったまま「よう帰ってきた」と前よりも少し力のない声で何度も繰り返した。卒業の報告をすると「ようやった」「石井博士じゃないんか」「お父さんお母さんのおかげじゃけえ」自分の卒業証書の話など、嬉しそうに、そして入院生活で少し呆けているせいか何やらかしこまった先生か悟りを開いた仙人のように話してくれた。慣れない病室では深夜になるとよく昔の記憶が幻覚のように呼び戻されて瞻妄(せんもう)という状態になってしまう。僕が会ったときはしっかりしていて顔色も良く、数週間前に死にかけたとはとても思えなかった。祖母はそんな祖父の付き添いで疲労困憊の様子だった。そんな祖母にも僕は心配をかけてしまっている。場所は病院だったけど、家族が揃って祖父も嬉しそうに笑っていた。また関西に戻る前に顔を見せておこう。
実家に戻り晩飯を食べ、ちびっと飲酒。岡本太郎のドラマを見る。妹が仕事のストレスで酒飲みになっていた。酒飲みの父を嫌がっていたあの妹が…蛙の子は蛙、血は争われないものだ。母はいつものようにテレビを見ながらテーブルでうつらうつら。「もう寝んさい」と言ってもそのままうつらうつら。これ以上無理させてたら駄目だなほんとに。
飲み会から帰ってきたべろんべろんの父がうつらうつらの母に、僕とあと一杯だけ飲ませてくれとねだる。母は「やめんさい」と咎めるが、いつもの通り僕がなだめつつ父にも本当に一杯だけと釘をさして屋久島の焼酎でお湯割りを二人分作る。いつものように父は大口を叩き、母は呆れる。しまいには酔っ払い父は妹には抱きつけないからと言って僕に後ろから抱きついてきた。家の中でだけ甘えん坊な妹はその父の後ろから抱きついてきた。やれやれ…(見守る母と抱きつかれた僕)。

当たり前かもしれないけど、こんな世の中で、互いに迷惑や心配かけていても、家族全員が揃えるのは幸せなことだなぁと、改めてしみじみと感じています。
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by yuzuruzuy | 2011-03-27 03:38 | 日記

自己犠牲

“俺、人助けしてる”

そんな自己満足的な善意など

本当に助けが必要な人にとっては

押し付けになってしまうのでは

相手が本当は何を求めているのか

自分を捨てて考える

そうしてみると

祈りなんて何の意味もない独りごと

励ましの手紙もただのゴミかもしれない

TVを見て悲しんでも

被災者の気持ちは被災者の人にしか分からない

本当に自己を犠牲にして何かを守るときが

僕にも来るかもしれない

だから

強く生きよう
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by yuzuruzuy | 2011-03-15 03:56 | 独り言

『水中都市・デンドロカカリヤ』 安部公房

 新潮文庫の安部公房 15冊目まで来ました。今出版されているもので残すは1冊。
 安部公房の初期短編11編。感想を簡単に。

≪デンドロカカリヤ≫
 不気味な語り口で綴られた、“コモン君がデンドロカカリヤになった話”。
ぼくらはみんな、不安の向うに一本の植物をもっている。伝染病かもしれないね。植物になったという人の話が、近頃めっきり増えたようだよ。(p.9)
 “植物になる”ということが、現在の喪失、自殺した人間、精神分裂などのパラフレーズとして使われているのかな。結末にはゾッとした。

≪手≫
 この物語の展開には思わず唸ってしまった。かつての伝書鳩“おれ”が、観念化され銅像となり、さらにその銅像の足首を鋸で切ろうとしている“手”。この設定だけでも脱帽したくなるのだが、そこからさらにストーリーが加わっていく。なんとも言えない読後感を味わった。

≪飢えた皮膚≫
 貧乏人が金持ち夫人に復讐する話。夫人が薬物にはまっていく姿がブラックに描かれている。身体の色が変わってしまう病気というアイディアが安部公房らしい。

≪詩人の生涯≫
 糸車に巻き込まれた老婆が糸になり、その糸からジャケツが作られる。買い手もなく彷徨いはじめたジャケツは、詩人である息子の前に立つ。冬の厳しい寒さと春の訪れを感じさせる文章が印象深い。

≪空中楼閣≫
 無職の男のアパートの前に貼られていた“空中楼閣建設事務所”の工員募集。実体のない職業に、採用されたと思い込んだ男はどんどん狂っていく。

≪闖入者≫
 夜更けに突然やってきて、住み込み始めた闖入者9人家族。彼らをなんとかして追い出そうと、男は奮闘する。この設定も怖いな…特に一人暮らしには。都市伝説とかでありそう。孤独になっていく現代社会の生への皮肉だと思う。

≪ノアの方舟≫
私はノア先生を見捨て、方舟を見捨て、そして村を永久に去ることにしました。今となって、私にねがえることはただ、この愚かなアル中患者に関する伝説が、せめて誤り伝えられぬことをねがうだけでした。
 この最後の文章がすべてを語っている気がする。ノア先生のめちゃくちゃな天地創造論も面白かった。

≪プルートーのわな≫
 猫に鈴をつけに行くのは誰だ?安部公房版イソップ童話。

≪水中都市≫
 魚になるとは、どういうことか?父親を名乗る男が、魚になっていく描写は、生臭ささえ漂ってくるようで、想像するとかなりグロテスク。

≪鉄砲屋≫
 安部公房には珍しい、政治色が濃い作品。その中でも、“雁もどき”の大群の襲来に備えて銃を売るという、奇想天外なアイディアで異世界感たっぷり。

≪イソップの裁判≫
 少し分かりにくかったけど、“噂”というもののいい加減さを皮肉った作品なのかな。


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by yuzuruzuy | 2011-03-11 19:32 | 読書

『あしたのジョー』

明日のために、死に物狂いで今日を生きる

見終わってからの正直な感想。この映画の主人公は力石徹だった。そのくらい伊勢谷友介演じる力石の存在感がデカい。初めてキャストを聞いたときには予想できなかったほど、力石になっていた。蛇口のシーンや軽量のシーンは鳥肌。

山Pはちょっと負けてたなぁ。原作の矢吹丈から溢れる野生の狂気が足りなかった気がする。飄々とした感じはあるけど、クールすぎた。ジョーはもうちょいおどけたり、喋るイメージ。

丹下のおっちゃん役の香川照之はもう流石としか言いようがない。この前の井岡の世界戦のゲスト解説でもめちゃくちゃ興奮してたように、ボクシングに向かう姿勢が本物。主人公のサポート的な役を任せたらなんでもできるんじゃないかこの人。

龍馬伝のせいで高杉晋作(伊勢谷)と岩崎弥太郎(香川)がどうしても出てきてしまう自分に反省。小松帯刀の人も出てたし。最近良く映画やドラマを見るせいか役者のイメージが残りすぎていかんいかん。

時間の関係で省かれた所が多々あり、残念な反面、原作を知っていればまぁ納得。紀ちゃんがでてないのはあれっ?と思うけど男ばかりのなかで葉子(香里奈)を際立たせるなら仕方ないか。力石戦後ジョーは一年間行方不明のあと、帰って来るのだか、見終わってから前の席の山P目当てと思われる女の子が“一年も何してたんやろ?(笑)”と話してた。そら漫画読んでなきゃ分からんわな。ほかにも原作ではホセ戦前のロッカールームのジョーと葉子のシーンが泪橋のシーンと重なるなど、変更点にも原作の要素が取り入れられていた。

監督は名前を見てもしやと思い、映画を見てやっぱり。『ピンポン』の曽利文彦監督。試合前のトレーニングシーンの高揚感はピンポンの主人公ペコの特訓シーンを思わせたし、ウルフ金串の中ボス的な描き方は、中村獅童が演じた帝王高校(?)のスキンヘッドそっくりだった。ぐるぐる回すカメラワークや、スローモーション、ポーズなどをつかって、漫画の1コマのようにキャラクターひとりの世界や、戦うふたりだけの空間にスポットを当てるのが上手い。しかもCGなども使ってそれを動かせるのだから、迫力満点。ストーリーをつべこべ言わず、漫画の映像化を楽しめる。パンチを食らったときの波打ち歪んだ表情や飛び散る汗は、映画にしかないエンターテイメント要素。クロスカウンターが決まる瞬間や、ジョーとの試合後、力石が倒れる場面などが特に強烈だった。スラムダンクも実写化するなら(してほしくはないが)この監督かな。キャストはともかく、山王戦の名シーンとか上手く再現してくれそう。

細かいところでは紙ヒコーキと泪橋の隅っに咲いた蒲公英(たんぽぽ)の使い方が良かった。高く高く飛んで行く紙ヒコーキは自由なジョーの生き方。強く咲く蒲公英はボクシングに賭けるジョーの決意。そんなところかな。関係ないけどどちらも19の歌を思い出させた。

あまり出番は多くないけどドヤ街の人々、とくにこどもたちがいい味出してた。

気になっていたラストシーンにもぐっときた。やはり最後は言葉など要らない。拳と拳で語り合うのみ。熱い。

原作好きな人は見て損はないと思う。何より映画館の大画面で再現されているのだし。
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by yuzuruzuy | 2011-03-09 23:59 | 映画

『時計じかけのオレンジ』 アントニイ・バージェス

 スタンリー・キューブリックの映画で有名になった作品。映画と演劇で観たので予備知識ばっちりだった。この作品の世界観を作り出しているナッドサッド語も理解しやすく、独特の語り口調に浸ることができた。
 映画のイメージから逃れることはできなかったなぁ。先に原作を読んだらどうなるのだろう?時間をおいてまた読んでみたいが、若いうちに読んでおくべきだったとも思う。
 この作品のエンディングに流すとしたらゆらゆら帝国の『ボーンズ』。
まだ子供だった頃出会った闇の様な
魔物が背中にあらわる あらわる

あの好きだったレコードを聴きながら
時計の役目は 終わった


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by yuzuruzuy | 2011-03-02 23:38 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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