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『第四間氷期』 安部公房

 未来とは何か?未来を知った人間はどう生きるのか?考えさせられる。
 この小説で予言されている未来はとても不気味。陸上を離れた水棲人間たち。その未来から見た現在の陸棲人間の描写がおもしろい。恐ろしいほどリアルに迫ってくる未来への予言。安部公房は、ホントにどんなとこから人間を見ているのだろう?


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by yuzuruzuy | 2010-02-22 12:37 | 読書

『燃えつきた地図』 安部公房

 安部公房文庫はこれで7冊目。古本屋で買い積んでいた分もだいぶ消化してきた。安部公房以外だとまだまだ山積みだけど。
 最初は探偵モノみたいに、失踪者の調査を依頼された興信所員主人公が、手がかりを求めて周辺の人物に関わっていく。しかし、いくら捜査しても、手がかりはつかめずに、反対に重要な人物達が次々と死んで、わずかなヒントを失っていくばかり。だんだんと何をしているのか分からなくなってきて、失踪者探しが、いつしか失われた自分探しになってしまう。
 失踪者というキーワードで、『砂の女』を思い出す。今回は探す側、舞台は都会という砂漠。失踪者と捜索者の間になんだか表裏一体なモノを感じる。
 興信所の仕事柄か、主人公目線の文章は些細な仕草や普通なら見過ごす風景まで事細かに観察されていて、それなのにそこから手がかりが何も出てこない。結局何もつかめない、無駄に説明的で複雑な文章。読んでいる感覚はカフカの『城』に近かったと思う。
 他人から関心を持ってもらいたいがために嘘を繰り返して主人公を振り回し、最後には嘘でなく本当に自殺してしまう失踪者の部下の田代や、ところどころ出てくるストーリーには関係ない人物達からも都会の孤独感がにじみ出てきていたりする。
 地図も持たずに孤独にただ点と点を移動する日々を生き、他人との間に見えない壁をつくった都会人は、失踪者とほとんど変わらないのではないか。
p.4 題辞
都会 ━━━ 閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくり同じ番地がふられた、君だけの地図。
だから君は、道を見失っても、迷うことはできないのだ。

p.297
「この辺を、せっせと歩いている連中だって、考えてみれば、一時的な行方不明人みたいなものだな。一生か、数時間かの、ちがいがあるだけで・・・・・・」
 読後に残る巨大な不安は答えの見つからない現代社会のシンボル。これが安部公房作品の醍醐味なのかな。


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by yuzuruzuy | 2010-02-08 11:51 | 読書

横尾忠則 公開制作 ②

最終日、再び行って来た
ジブリの絵を描いている人の展覧会が開かれていて
この前平日で入場60分待ち
今日はなんと最大180分待ち
すごい行列だった。これがジブリの力か・・・・
横尾さん目当ての僕にゃさすがに並ぶ気になれん
なんといってもこちらは無料だし

今日は昨日描かれていた絵の続きから始まった
朝から行けば白紙から見れるかと思ったが、残念。
昨日の絵はキャンバスに上下逆さまのY字路
モデルの写真を逆さまに見て描いていた
そのままの視点で描くのではなく、何処か遊び心を求める横尾ワールド
そこに細かな説明は不要のようだ
敢えて眼鏡をかけない二重にぼやけた視覚で描いた時にどうなるか
そんな自分でも予想のつかない結果を楽しんでいる

午後からは新しい絵を描くか、前回の絵の手直しをするか、プランを決めていないらしく
お客さんとの質問タイムを経て、ふと思いついたように前の絵をセットし、
何かが降りて来たのか、憑かれたように前日までに描き終えた絵を
布で大胆にこすり始めた

そのとき納得できるカタチに何度も変化させる
自分の衝動でいつ変わるか分からないから、未完
またしても思い知らされた

今日知ったが横尾さん、70歳過ぎてんのか
にしては、すごく若いですわ
いつまでもあんなエネルギー持ち続けないとねぇ

こんなに早く本人、しかも制作現場を見れるとはラッキーだったな
安藤忠雄や安田団長(笑)もそうだったけど、
実際に見て人の持つ雰囲気を感じることで
自分の中でその人物がバーチャルな存在からリアルな存在になる

安部公房とかカフカに会うのはもう無理だから、
作品を読んで、魂に触れるしかないもんなぁ・・・

今度会うまでには何かしら自分も描いていよう。
勉強させていただきました。
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by yuzuruzuy | 2010-02-06 23:56 | 表現

『飢餓同盟』 安部公房

 ユートピアを目指すため革命を企てる男、花井の指導の下、町からどこか外れた人々がなんとなく集まってできた飢餓同盟。町の権力争いに巻き込まれてどんどん崩壊していく。秘密結社による革命という目的をめぐり、戦後の生きることに強烈な執着心を持った村人達がぶつかっていたり、花井がずれてしまった目的のために狂っていき、そのため周りの人たちが離れていく様子が
非現実な世界からとてもリアルな現実を突きつけてくる。最終的に狂ってしまった花井は村社会の発展のための生け贄なのか?いろいろ考えさせられるのだが、何を考えさせられているのかまだ分からない。
 地熱についての科学的な記述とか、人間を計器にしてしまう想像力は安部公房ワールド全開で少し難解だった。“ひもちび”とか“ウルドック”なんていうもじりの言葉遊びが面白い。複雑に絡んだ人間関係とか権力関係も、よくここまで作れるなぁ。


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by yuzuruzuy | 2010-02-05 20:50 | 読書

横尾忠則 公開制作

自転車に乗って
お気に入りの美術館へ

そこでみんなの前で絵を描いていた
画家 横尾忠則
思ったより若いような、ただのおじさんなような
でもその背中に向けられた大勢の視線を他所に
黙々とキャンバスだけに集中して向かっている姿には
職人的な雰囲気があった

d0137443_22242232.jpg


兵庫県のY字路をモチーフにした絵
何度も塗り重ねられた色

一筆一筆が変化するための瞬間
ある程度きれいにできてもまた壊したくなる
波が打ち寄せる砂浜で遊ぶ子供のように
波が押し寄せては絵を壊し、子供が補修し、再度創造
一人の中に波と子供があって、その破壊と創造の繰り返しなんだという
だから終わりがない、永久に未完成

“でもどこかで止めないと分厚くなりすぎるでしょう”
そりゃそうですね

言葉のとおり、何度も色を付け加えたり、消したりして
絵筆で何度もキャンバスに触れていた


終わってから廊下でY字路の写真を眺めていると
横に何かオーラを感じて振り向くと
すぐそこに描き終わり外に出るのかジャケットを羽織った横尾忠則が向かってきていた
はっと目を合わせた僕は頭の中がノーアイデアで
最初それがさっきまで目の前で絵を描いていた画家と言うよりは
部活の顧問の先生とすれ違う時のような感覚になって
スタッフでもなんでもないのに
お疲れ様ですといわんばかりにペコリと頭を下げて道をあけ、もう一度目を合わせた
ちょっと不思議そうな顔をした気もするが
TVで観たとおりいつも何か疑問を持っているように少し唇を尖らせた横尾忠則は
僕の背後をひょろっと歩いていった


人が絵を描くのをここまで真剣に見たのも初めてだったし
ここまで真剣に絵を描いている人も初めてみた
終わるまで観客などまったくいないような自分の世界に入りきっていて、
真っ直ぐ自分の作品とだけ会話しているみたいだった
夜の景色だったので、描かれている世界にだんだんと光が注がれて、
はっきりとしていく過程が見れてワクワクするようだった
名画といわれる作品もこのように何度も塗り重ねられて
少しずつできあがったものかと思うと、絵画の鑑賞方法も変わりそうだ

モナリザもダヴィンチにとっては未完成だって言うしなぁ・・・・

もう一回、今度は描き始める時間に行ってみようと思う
やっぱりライブは違う
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by yuzuruzuy | 2010-02-03 22:36 | 表現

『働くことがイヤな人のための本』 中島義道

 こんな題名に惹かれる自分はどうかと思うが、古本屋で100円だし直感的に手にとってしまったものは仕方ない。4人の社会から考えのはみ出した架空の人物との対話形式で、働くことと向き合うためのメッセージが自分の人生経験を通し書いてある。引きこもりの法学部留年生なんて自分も一歩踏み込みかけてそうな人物にドキン。
 著者は哲学者。12年間大学生活を送って、37歳でようやく大学教員の定職を持ったという、自分でも書いているが相当な引きこもり生活を経験して、かなり反社会的な考え。
 そんな人物が書くものだから、頑張ったらきっと天職が見つかるはずさなどと、働けない人を励ますようなことを書くはずもなく、絶えず人はどうせ死ぬんだとか、結構虚無的。
 何度も繰り返しかかれていたのが、人生、社会の理不尽さと向き合えということ。幸福に生きるために人間は科学や法律で理不尽さ、不合理さを隠してきた。その結果どうしようもなく適合できない人々が出てくる。だって人間もとから不合理なんだから。いかに不幸になろうとも“死”を見据えて生きる。それが不条理を認めることであり、よく生きることにつながるのではないか。
 まぁ最近の読書歴をご覧のとおり、不条理とは向き合うつもりでいますよ、僕も。読んだばかりの、カフカの『城』の主人公Kや、『異邦人』のムルソーについても書かれていて、この本を選んでしまったのにも理由があったのかもしれないと思う。不条理のただ中での二人の生活は、孤独だが、自分だけが清潔なように感じさせる。まぁ、二人とも職がない状態ってのは問題だな。こういうことを考えながら、根っからの哲学者になりきれなくとも、どんな仕事を通しても哲学できる生き方が良いのかな。
 最近選んでしまう本はクセの強い著者が多い・・・選びたいんじゃなくて、選んでしまうんです、これも不条理?


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by yuzuruzuy | 2010-02-01 15:31 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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