人生で一番若い日。

汗かき歩いて出勤したらちょうど、売り場に馴染みのマダムがいらっした。

あなたのおすすめは美味しいと言ってくださる有り難いお客様である。

数ヶ月ぶりだったので、テンションが上がり、

私服のTシャツで鞄を背負ったまま、歓談しつつ接客。

帰り際、「久しぶりにあなたの顔がみれてほっとした」と言われる。

こちらこそです、マダム。


そのすぐあと、また他の顔見知りマダムがご来店。

これまた久しぶりで、しばしの歓談。


顔を合わせるとこちらも安心できる。

ただの店員、以上の親近感をもってくれてると感じる。

こういうお客さんを、自分は増やしていかねばな。


そんなことを考えつつレジに立っていると、

一人のムッシュがやってきた。

眼鏡を外したカーネル・サンダースを、

柔らかく、のっぺりさせたような、

白髪のムッシュ。


レジで商品を打ち始めたときに一言、

「あなた、いくつになったの?」

まるで前から知っているかのように、

数年ぶりにあった親戚のように温かい声で尋ねられたが、

以前に話した記憶はない。

訝りながらもなるべく落ち着いた声で

「今年で27歳になりました」

それを受けたムッシュが一言、

「今日が人生で一番若い日だから」

ハッとした。

ムッシュは繰り返す。

「今日があなたの人生で一番若い日」

「んん、確かに。すごい、名言ですね」

「いい出会いも限られてくる」

「はい」

「グッと目を閉じて、パッと開いたときに、目の前にいる人、上だけ見ててはだめ」

ムッシュは、レジを打つ僕の前で、財布からお金を取り出しながら、

表情豊かにグッと目を閉じて、パッと目を見開き、手本を見せてくれた。

そしてまた繰り返す。

少し込み始めたレジを気にするそぶりなど見せず、まっすぐ僕の方を向いて。

僕は釣り銭のミスがないように注意しながらも、

ムッシュの言葉を脳に焼き付けようと、耳を傾ける。

「グッと目を閉じて、目の前にいる人、価値観の合う人」

「はい、肝に銘じておきます」

あまりにも唐突に、今の自分の心に優しく響く言葉をいただいた。

まるで神のお告げのようだった。

ありがとう、ムッシュ。


今日がこれからの人生で一番若い日だ。

あの頃は若かった、

年をとったなんて、

言うのはやめだ。

今日が一番若いなら、

昨日は振り返るものではなく、

前を向いたまま振り払うもの。

明日へ向かうのみだろう。



はて、それにしても、

言葉のありがたみを感じつつも、

ハナから独身と決めつけられて、

熱心に諭された自分が、

なんだか哀しくなってきた。



グッと目を閉じ、

パッと開いて、目の前を見る



ムッシュ、

今日、目の前に立っていたのは、

二人のマダムでした。

どうも、目を閉じるのが短かったようですね?

またの名言、心よりお待ちしております、ムッシュ。
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by yuzuruzuy | 2013-09-10 02:22 | 日記


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