『海辺のカフカ』

村上春樹作品初の舞台化。
演出は巨匠・蜷川幸雄。
しかも自分が小説の世界にはまるきっかけともなった作品とあり、チケット代もなんのその。

二階の二列目中央寄りでなかなか良い席だった。

最近また原作を読み返し、最後の百ページほどを残して観劇。

気になる配役、主演カフカは柳楽優弥。これは文句なしだ。
ヒロイン、というべきか分からないけど佐伯さんは田中裕子。
個人的に好きなもう一人の主人公ナカタさん役に木場勝己。
カフカを姉のように助けるさくら役に佐藤江梨子。
いい感じだ。

初っ端、舞台装置に魅せられる。
いくつもの透明ガラス張りのコンテナに乗ったセットを黒子たちが浮遊させるようにゆっくりと動かす。無機質な素材で仕切られたいくつもの容器の組み合わせ。そこに人間の力が加わることで舞台の奥行きと幅いっぱいにひとつの世界を作り出す。こりゃ大変だ。
その合間からこれまた透明なガラスケースに横たわって、カフカ登場。ガラスの容れ物の中で動かないカフカ、はじめは人形かと思った。とても幻想的なオープニング。

そしてカフカと、カラスと呼ばれる少年のシーンからスタート。台詞も原作通り。
劇中の台詞は原作に忠実で、まるで本をめくるように淡々と物語が進行していく。でも本と違って、台詞には役者の表現しようとする感情が乗っかってくる。そこが新鮮であり、違和感を感じずにはいられなかった部分。村上春樹作品の登場人物たちは、ほとんどが感情を表に出さない、クールなイメージ。感情を直に伝える舞台演劇にするには難しいのかも。でも映画化されたノルウェイよりも、わざとらしさがなく、すんなり受け入れられる。これが舞台の力か。目の前でスピーカーなしの、一度きりの言葉が発せられ、ディスプレイ越しではなくより直接的に、観る者を異空間に連れて行ってくれる。映画はあくまでも視覚的、聴覚的なもの、いわば視聴するもの。対して生の演劇には、視覚、聴覚以上の何かがある。身体的に、精神的により深く体験するもの。今回は何ヶ所か役者が台詞に支えそうになる場面もあって、そこがより魅力を感じさせる。

書き始めたら本当にきりがない。
時系列は無視して、思いつくがままに書き残そうと思う。

ナカタさんと猫の会話の場面。
猫はどうするんだろうと思ったら、人間と同じサイズで気ぐるみ。
子供役のマメ山田が三輪車で走り回りながら、怪しげに見つめる。
不自然な場面でも、観客に近い目線で見れる人物を投じたり、
不自然さを逆手にとったコミカルな演出を取り入れることで、そのギャップが埋まってしまう。

つなぎで流れたThe DoorsのBreak on through。

さくらの部屋で飲むペプシコーラ、星野青年が火をつける赤のマルボーロ、ナカタさんの登山帽とボロボロの靴などが世界観を忠実に再現する。大島さんのロードスターを運転するシーンがないのが残念、マツダがんばってくれよ。

カラスと呼ばれる少年の存在は、舞台上で具現化されることでより大きくなった。
小説で感じていた印象では、カラスは悪魔メフィストフェレスのように、主人公が立ち向かうべきもう一人の自分だった。
舞台上で実体化されて表現されたカラスは、少年カフカのよき理解者であり、協力者のようにさえ思えた。

ジョニーウォーカーがナカタさんの目の前で猫を虐殺するシーンでは、
カフカが図書館(原作では山奥のキャビンだったが)で、ナチスのホロコーストを指揮したアドルフ・アイヒマンについての本を読むシーンとシンクロさせる。“暴力”とは何か。
ジョニーウォーカーが猫を殺すシーンは、小説で読んだ時のほうが生々しく感じた。

生身の人間として表現されたとき、一番観客に近い存在だったのが、星野青年。
ナカタさん、カーネルサンダーズ、なんでも受け入れてしまう。
ほぼ唯一、現実的な目線を持ちながらもしっかり物語に溶け込んでしまう存在。
結構重要な登場人物だったなと再確認。

カフカと佐伯さんが関係を持ってしまうシーンでは、二人の乗るガラスケースが合わさって最初は遠近法を使い、夢か幻のような印象を与えながら、だんだんと重なりあっていく、とてもスピリチュアルな感じの演出。ガラスケースはそれぞれの世界。

“海辺のカフカ”の曲も聞けた。
意外に歌謡曲テイスト。

まだまだもっともっと長くなりそうだが、そんなこんなで休憩挟んで約4時間、物語に浸る濃密な時間を過ごした。

柳楽優弥は目力が凄かったな。ギラギラ。声の印象もだいぶ違った。

やはり小説を読んだだけでは分からない、物語の持つ意味だったり、新たに発見する仕掛けもあった。

読書の追体験なので、大きな感動まではなかったけど、

誰かの夢の中に浸っていた気分。

たまにはこういう体験して、

現実世界に対抗するための想像力を磨かないとな。


帰りにおばちゃんが騒いでいると思ったら、

某有名スケート選手が観劇しにきていた。

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by yuzuruzuy | 2012-06-22 17:19 | 表現


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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