『炎上する君』 西加奈子

またまた面白い作家を見つけてしまった。またまたピース又吉経由なんだけれども。ダ・ヴィンチのインタビューでオススメ作家として紹介されていたなかで、自分があまり読まない女性作家だったので読んでみた。古本で買ったからついてなかったけど、単行本の帯に又吉がコメントを寄せている。“読者としての僕を満足させながら、芸人としての僕を不安にさせる”ここまで味わい深い帯のコメント、見たこと無い気がする。

“太陽の上”
 「太陽」という名の中華料理屋の上、アパートの一室に住んでいるあなた。あなたは、ひとりだ。まるで自分が主人公になって、怠惰な生活を誰かに語ってもらっているような文章。不思議な感覚、引き込まれる。

“空を待つ”
 主人公は作家。散歩の途中に拾った、待ち受け画面が空の写真の携帯電話。悪戯のつもりではじめた、持ち主の友人「あっちゃん」とのメールのやりとり。気がつくと作家は「空の携帯電話」を手放せなくなっていく。拾った携帯で、知らない誰かとのメールのやりとり、その発想の時点で面白いのに。

“甘い果実”
 作家を目指して本屋でバイトする主人公と山崎ナオコーラの話。繰り返されるナオコーラに、ナオコーラってなんだかわからなくなってくる。そしてオチもまさかのナオコーラ。

“炎上する君”
 足が炎上する男を探す梨田と浜中。地味なふたりのやり取りが面白い。「君は、炎上している。」炎上の意味を知り、この最後の一文を読んだとき、鳥肌が立った。

“トロフィーワイフ”
 互いをばーさん、まごちゃんと呼び合う祖母と孫の、アメリカ文学を読んでいるような会話が生むフワフワした空気感。女性にしか書けない文章だなと思った。

“私のお尻”
 この発想もすごい。お尻を顔のように書くなんて、ニコチャン大王以来だろう。まぁニコチャン大王までは行かず、あくまで比喩だけど。かなり笑えるけど、誰しも持っているチャームポイントやコンプレックスを巧く表現していて、自己の存在についてまで考えさせられる。そして終盤はドキッとする。この短編集の中で一番好き。

“船の街”
 どこにあるのだろう。自分も行くことはあるのだろうか。もしかしたらもう行ったことがあるのかもしれない。船の街の話。

“ある風船の落下”
 これも発想の勝利。ストレスがガスのように溜まって身体が膨らみ、終いには宙に浮き始める病気「風船病」。そんなシュールな発想と、ドラマチックな展開。奇想天外な前半の展開に笑い、ラストにはかなりジーンときた。

 全体を通して、細かいところで吹き出すような面白い文章にも関わらず、女性らしいロマンチックな芯があって、なんとも言えない感覚になる。どの物語も読み終わったあとの余韻がじわーっと長く続いた。シュールな発想と少しやさぐれたような世界観が自分の好み。特に良かったのは“空を待つ”、“炎上する君”、“私のお尻”、“ある風船の落下”。自分の好きな文章を書く人を見つけたこの感覚、久しぶり。


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by yuzuruzuy | 2011-11-02 23:35 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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