『負けるのは美しく』 児玉清

 少し前に買って読もうと思っていたらまさかの訃報だった。児玉清が俳優になってからの半生で出会った人々やさまざまな出来事についてのエッセイ。芸能界きっての読書家だったというのは伊達じゃないといった文章。いつもどこか醒めているのに、内側にはメラメラと燃えるものも感じる。遅刻した挙句水着を忘れてパンツで受けた東宝映画のニューフェイス試験の面接のエピソードや、未来を予言すると突然訪ねてきてから数十年も付き合うことになるアベ神との出会いなどはとてもユーモラス。過去の名監督、名俳優達とのエピソードには、黒澤明や三船敏郎が出てきて、そのときはまだまだ無名な新人だった児玉清にとっての思い出は、今の自分でも共感できる。世界のクロサワに盾突くほどのファイトの持ち主だったというのに驚いた。また老年俳優たちの姿に学んでいくエピソードも熱かったり、優しかったりで心を揺さぶる。このような昔話ならいくらでも聞いていられそう。
 あとがきだけ読んでも魅力的な人柄が伝わってくる。
客観的に見つめようとすればするほど、欠点ばかりが目立って、どうにも敗北感や挫折感しか生じない。しかし、それだけでは、あまりにも立つ瀬がない。意気消沈するばかりだ。そこで知らぬ間に心に期するようになったのが「負けるのは、美しく」ということであった。どうせ勝利感を得られないのなら、また明確な勝利も望むべくもないのなら、いっそ、せめて美しく負けるのを心懸けたら、どうなのか、そう考えたとき、はじめて心に平和が訪れた思いがするのだ。 ──p.288「あとがき」より
 若くして亡くなった娘さんについて書かれた最後の章がとても感動的だった。本人による挿絵も素敵。

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by yuzuruzuy | 2011-05-25 19:19 | 読書


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