しみる言葉たち

とある本を読んでいて、使いたくなるような言い回しが連発中。
なので感想とは別に書き残しておく。

≪通奏低音≫
(音楽用語)2声部以上の音楽において、途切れることなく奏される低音声部。
──音楽用語を文学で用いた知的な表現。
疑問や不満が“執拗な通奏低音となって心の底に響いていた”
アジカンの『架空生物のブルース』の歌詞でも印象的に使われていた。心地よい響きの語句。

≪豪放磊落(ごうほうらいらく)≫
気持ちが大きく、小さいことにこだわらないようす。
──いい加減とか、大雑把とかいう言葉では表せない人のスケールの大きさを評せる。
自分の性格からは程遠い、ちょっと憧れる四文字熟語。
こんな言葉を使って人を評することができる当人は、豪放磊落ではなかったりする。

≪エロキューション≫
話術。台詞回し。発声法。
──専門用語っぽいけど、カタカナにすることでちょっとおしゃれ。
畏まった文章の中で急に使われたら“エロ”って二文字がかなり効く。

≪訥々(とつとつ)≫
つかえつかえ話すさま。口ごもりながら話すさま。
──口下手な人も、前出の語句と合わせれば“独特なエロキューションで、訥々と語る”なんていう風にとてもあいくるしく描ける。

≪目茶≫
めちゃの当て字。すじみちの立たないこと。わけのわからないこと。度をはずれて法外なこと。
──滅茶と書くよりも、柔らかくユーモラス。ひっくり返したらお“茶目”なところもいい。

≪滋味≫
うまい味わい。滋養のある食物。物事の豊かな深い味わい。
──日本語にはこのような豊かさを表現する語句がたくさんある。
この二文字自体が“滋味あふれる語句”。読んでいて涎が出てくるような。
話し言葉では“地味”と混同してしまいそうな、書き言葉ならではの味わい深い語句。

≪諄々(じゅんじゅん)≫
ていねいに繰り返し教えいましめるさま。まめやかにいそしむさま。
──面倒に思うような説教も、このように書くなら味わい深い時間に。
まぁ本当に面倒な説教なら、間違った用法だろうけれど。

≪干天の慈雨≫
(慣用句)困惑しきっているときに救いが現われたり、待ち望んでいたときに期待したものが得られたりすることのたとえ。類語=地獄で仏
──“晴天の霹靂”はよく聞くけど、こちらも天気に関する慣用句。慈雨って言い回しが良い。
諄々と優しく説いてくださる○○さんの言葉はまさに干天の慈雨のように僕の心に深くしみこんだ”

≪含羞(がんしゅう)≫
はにかみ。はじらい。
──“はにかみ”なんてのは若い人に使えばストレートでかわいらしいけれど、それだと少し軽すぎるような、年上の人に使うならこっち。とっつきにくい先輩の意外な一面や、人間味を書くときに効きそう。
恐い人だと勝手に思い込んでいたが、実際に会ってみれば、“少年のような純粋さと含羞を感じさせる。”

≪伝法(でんぼう)≫
いなせな態度。特に女が勇み肌をまねること。
──強気で乱暴に見える女性でも、実は真面目でひかえめだったり…そんなギャップを書かれたら魅力倍増。


このように、含蓄ある多様な表現で出会った人々を実に魅力的に描いていてとても面白い。
一見ネガティブに受け取れる一面も、言葉の魔法で心地よく伝わってくる。
現代語はどんどん簡略化されて、分りやすくて刺激的な言葉が好まれがち。
少々難しくても、こういう言葉たちはいつでも使える場所に大事にしまっておきたい。
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by yuzuruzuy | 2011-05-24 01:53 | 表現


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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