『教祖誕生』

ビートたけし原作のものすごいタイトルの小説の映画化作品。
監督はしていないが重要な役で出演している。

ひと昔前の作品のせいかチープな雰囲気は否めないのだが、逆に新興宗教の胡散臭さがにじみ出ているし、主演の萩原聖人、団体幹部のビートたけし、岸部一徳をはじめキャストも抜群。ニセ教祖のじいさんがいい味出してる。玉置浩二の役どころは原作のイメージと違いすぎて失笑。しかし演技は原作での役のイメージを変えるくらいに良かった。

新興宗教の様々な面を皮肉った作品で、原作を以前読んでいたためテンポが良いとも感じたが、
初めて映画で観る人にはドタバタして少し薄っぺらく感じるのではないかというのが正直な感想。
宗教とは、神とは何なのか徹底的に考えさせる原作のほうがおすすめ。
特に原作では冒頭の、「イヌ鷲と山鳩」の話が重要な前置きとなっていたので、映像化は難しいだろうけれど省かれていたのが残念。

ビートたけし演じる、金のために教団を操る幹部・司馬の台詞がそのままたけしの宗教観なのかもしれない。
「神様ってのは、人間の創造したさ、創造物の一番のものだと思うよ。あるのかないのかは分かんない。」

なんとなく入会し、なりゆきで新教祖になってしまった主人公の和夫(萩原聖人)が次第にその気になり断食してる間、幹部の司馬は豪華な飯を食って、和夫に差し入れまでするシーンが象徴的。
一方で真面目に信仰し続け写経したり教団の曲を歌う駒村(玉置浩二)もいて、それぞれの価値観で教団にいる。個人の価値観まで画一的にしようとする新興宗教への風刺ともとれる。

「どうして教祖になるとみんなその気になっちゃうのかなぁ。」
「2週間の断食で神様になれるぐらいなら、山で遭難したやつはみんな神様になっちゃうよ。」

金、権力の亡者と呼ばれようが司馬の論理は揺らぐ事はなく、
駒村の純粋な信仰心もその鉄壁を前にしてなす術がない。


駒村を刺してしまった後の司馬と和夫のやり取りがとても意味深。
和夫「罰が当たったんです、神はいるんです。」
司馬「やっと神の影が見えたってことかな…」
和夫「あなたは…こんなことでしか神に近づけないんですか。」
司馬「和夫、お前どこで変わっちゃったのかな…」

一見同じ“神”でも、ある人にとっては救ってくれるものになり、ある人には金儲けの道具にもなってしまう。

ここで原作からも引用。「イヌ鷲と山鳩」の話に続く文章。
人間って不思議な生き物だ。誰もが悲しみに沈むってこともないし、誰もが喜びに舞い上がるってこともない。ひとつことに対して、立場が違えば意味がまるで違ってくる。神はいったいどの立場に立っているんだろうか。


映画はこんな台詞で終わる。

“多くの、インチキな新興宗教がまかり通るこの時代に、いったい、真の宗教とは何であるか、そのことをもう一度、みなさん考え直していただきたい!”

これを、出所してもまったく変わらず再び宗教をやり始めた司馬に言わせるオチは、まったくビートたけしらしい。
テーマが宗教だからといって身構えず、コメディとしてみるべし。
それから考えたい人が、考えれば良いのだ。

エンディング曲もぶっ飛んでる(笑)
こういう映画、これからは生まれないような気もするなぁ。

教祖誕生 (新潮文庫)

ビートたけし / 新潮社


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by yuzuruzuy | 2011-04-20 00:58 | 映画


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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