『文章読本』 三島由紀夫

 本の山からもうひとつの『文章読本』三島由紀夫版。厳格なイメージを勝手に持ちながら読み始めたのだがそれは第一章の終わりですぐに覆された。
私はなるたけ自分の好みや偏見を去って、あらゆる様式の文章の面白さを認め、あらゆる文章の美しさに敏感でありたいと思います。(p12)
 “三島先生、よろしくお願いします”と、この一文で一気に引き込まれた。この『文章読本』で著者は、徹底して読み手の視点からさまざまな作家の名文を分析する。第一章(p10)に書かれている通り、“普通読者”を“精読者(リズール)”の領域に導こうとするもの。
第二章は、谷崎潤一郎の『文章読本』と同様、韻文、散文、日本語文、英語文、さまざまな文章についてその特徴が分りやすく書かれている。なかでも日本語と英語それぞれの発達と変化の違いを、町並みや建造物に関係させて説明したり(p35)、文章の味わい方を散歩や酒に喩えて語る(p43)など、著者独特の美しい文体も味わいながら読める。例文として引用された各作家に対する分析は鋭く、森鴎外の文章については本を通して尊敬の念が伝わってくる。多種多様な名文が引用されているので、三島由紀夫の解説と照らし合わせながら精読を重ねたい。よき書き手である前によき読み手であれとはまさにこのことだと思わされた。
 谷崎版もそうだったが、すらすらと読み易い文章だけど、一度じゃ分らないほどの内容が詰まっている。自分の精読力の未熟さと、作家の飲み込みやすいけど栄養たっぷりな文章の力を思い知る。
私はひとりの小説家であります。机に向かっています。空中の窒素と酸素を化合させて、ある種の薬品を作る人のように、私はなんにもない空中から何らかの元素を抽出して、それを文章に固定します。(p186)


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by yuzuruzuy | 2011-02-08 20:46 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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