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『文章読本』 谷崎潤一郎

 文豪・谷崎潤一郎による文章論。今までは名前を知っているだけで彼の文章に触れたことはなかった。1886年、僕の生まれる100年前に彼は生まれたらしい。芦屋市に谷崎潤一郎記念館もあるので、一度訪れてみたい。
 文章の視覚的効果と音楽的効果という2つの感覚的要素があるという説明や、日本語と英語の比較などからも分かるように、谷崎潤一郎という小説家は、言葉について幅広く研究し、それを自身の作品に注ぎ込んだ人なのだろうと思う。この本を読んだ今、下手な文章を書けば即、筆者から“悪文の手本なり”と罵られてしまいそうな気さえする。当然のことだが、上達するためには文章に対する感覚を研くことが必要。この本の中ではテーマに沿ったいくつかの例文を谷崎さんが解説してくれるため、説得力がある。ですます調で“~であります”とか“皆さんは”と、教師が呼びかけるような文体は文豪のイメージとは異なり親しみやすかった。いくつかキーワードを挙げておく。

・小説の文章とは最も実用的な文章であるべき。「華を去り実に就く」ような、無駄な飾りを切り捨て引き締めることで一層印象がはっきりするものであるべき。

・人に「分らせるように」書く秘訣は、言葉や文字で表現できることとできないこととの限界を知り、その限界内に止まること。

・簡潔な美しさと云うものは、その反面に含蓄がなければならない。単に短い文章を積み重ねるだけではなく、それらのどれを取っても、それが10倍20倍に伸びるほど中身がぎっしり詰まっていなければならない。

 自分が感じた大まかな結論は、今までの言葉の訓練と重なる部分が多かったが、一見ひとつひとつの単語の意味の力が小さくなりそうな小説における一文でも、何度も削られ、研かれたものでなくてはならない事を実感した。文章を書く人にとっては、身が引き締まる本。意外にすらすらと読めた。
 文字の字体からルビ、見えない間隙といった文章の細かな要素がもたらす効果を緻密に分析しようとする美意識に脱帽。谷崎作品にも触れてみよう。


by yuzuruzuy | 2011-02-04 22:43 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


by yuzuruzuy

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