『ノルウェイの森』

数年前読んだ原作の印象と、綺麗な映像と音楽に引き込まれたが、
正直なかなか感想の持ちにくい映画だった。
省略された部分も多いし、原作を読んでから観た方がいいと思う。
そして原作を受けつけない人は、映画も受けつけないんじゃないだろうか。

村上春樹作品のイメージなしでは、
主人公のワタナベ(松山ケンイチ)はただの女たらしになりかねず、
登場する女性たちの言動にも理解しがたいものがある。

原作を読んでいればストーリーよりも映像の綺麗さや実写化された作品の雰囲気に注目できるし、
そこを味わうための映像版と割り切って観ることで、『ノルウェイの森』の世界に浸った気分になれる。
あとはPG指定ということも忘れずに。こんな作品だったっけと思うくらい“その種”のシーンや台詞は多かった。まぁ現実じゃありえないような村上作品独特の喋り方などによって、小説のドライな感じは損なわれていないようにも思えた。そんな“村上春樹らしさ”を知らなければ「この人たち何言ってんの?」となりそう。

ここでは物語というよりも、小説世界が再現された“映像作品”としての感想に留めておこう。

個人的には、登場人物の横顔のカットが多くて印象的だった。
二人が並んで見つめあったり、遠近法で横顔同士がすれ違ったり、
作品通してなにかと重要な役割を持つ、“横顔で語る”場面が多かったと思う。
ミドリ(水原希子)とワタナベが大学食堂で初めて会話し、相席してきたミドリにワタナベが「ちょっと横向いて」と言って彼女の横顔を眺めるところがさりげなく心に残る場面。
ワタナベの横顔が映るたびに、松ケンの鼻は立派だなぁと思った。
ミドリ役の水原希子の横顔が切なくて良かった。
雪の中のワタナベとミドリの横顔の場面が綺麗で個人的に一番かなぁ。
松ケンは雪が似合うし、ミドリのニット帽姿にぐっ。
直子(菊池凛子)は、ちょっとかわいそすぎて、一番大事なところなんだけれども言葉にならない。
どんどん狂っていく儚い直子という役をあそこまで切なく演じた菊池凛子は凄い女優なんだなと思う。

他に印象的だったのは、直子からの手紙を受け取ったワタナベが学生寮の吹き抜けの階段を嬉しそうに駆け上がるのを下からクルクルとカメラが追いかけ、そのまま流れるような映像で風が吹く深緑の草原になる映像。本のページがパラパラとめくれていく感じでとても心に残る場面。

それから、ワタナベが直子を追いかけながら二人が歩く姿を横移動のカメラで追って映している場面がたくさんあり、そこに二人の関係が表れているようにも思えた。
直子はいつも早足でワタナベの先を行き、ワタナベは直子を一生懸命追いかける。
ミドリとワタナベの二人にも、歩きながら会話するのをカメラが追う場面がいくつかあった。
直接ぶつかることを避けるように、一定の距離を保ちながら接する登場人物たちの性質も表しているのかな。


後半は結構気分が沈んだ。
ワタナベが直子を失ったことの悲しみに暮れる場面はかなり劇的で意外といえば意外。
あんなに激しかったのかなと。もっと淡々とした無音の世界に近い絶望のイメージを自分は持っていた。
しかしその後の「悲しみ抜くしかないのだ」という台詞はグサリ。
こんなにも重く、切ない物語だったのかと気づく。

まだ気になったところを挙げると、
愛情についてミドリがワタナベに語る場面での、
ショートケーキを買ってきてもらってそれをぶん投げて、
次は何が欲しいのかまた聞いてもらう…というたとえ話が面白かった。
原作で探すとこのやりとりはp160にある。
買ってきたものをまたぶん投げられたら、男はまるでギリシア神話のシーシュポスだと思った。

他にも、さまざまな人物を通して、それぞれの“愛”を描いている作品。

ちょい役で糸井重里、細野晴臣、高橋幸宏が出ていておっ。
原作ファンのよしみとか?なのか??

ラストシーンの松ケンの緑セーターと赤電話は、
原作本の表紙を思わせた。

文章にしてみると、思ったより自分はこの映画を楽しめていたような気がしてきた。
僕は何ごとによらず文章にして書いてみないことには物事をうまく理解できないというタイプの人間なのだ。原作(上)p12

とりあえず、原作を読み直そう。

それでもう一回じっくり観たら、またなにか発見があるかも知れない。

村上作品の映画化はなかなか難しいのかなぁと思ったけれど、
これから他の作品も映画化するなら、『海辺のカフカ』は観たいなぁ。
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by yuzuruzuy | 2010-12-19 23:59 | 映画


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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