『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』

スタンリー・キューブリック監督映画。

冷戦下の核戦争危機の状態をブラック・コメディにした作品。
異常事態のなかでの軍隊や政治家たちのやりとりに声を出してダハハと笑った。
反共産、反ソ連思想がいきすぎて妄想に取り憑かれたリッパー将軍がソ連に対する核爆撃を勝手に命令し部屋に立てこもる。
事態が明らかになるとアメリカ大統領は緊急会議を開きその場でソ連首相に電話する。
酔っ払ったりヒステリーを起こすソ連首相にファーストネームで呼びかけてなだめるようにやさしく話す大統領。“ごめん、実は、キミの国を爆撃しちゃうかも知れないんだ。”そんなノリにニヤニヤ。
自国の戦闘機を相手に“爆撃してくれ”だとか、ブラックすぎてニヤニヤ。
その場で、ソ連の「皆殺し」計画なるものも判明し、人類は一気に破滅の危機に立たされる。
危機から生き残る手段として奇妙な科学者ストレンジラブ博士が始めた熱弁は、炭鉱の中に避難し、地上の放射能がなくなるのを待つというもの。安部公房『方舟さくら丸』じゃないか。
誰がその中に入るかについての博士の語りも、一夫一婦制は無視してもいいだとか、優れた人間をコンピューターで選び出すなどなど、めちゃくちゃブラックでニヤニヤ。
終いには興奮した博士は車椅子から立ち上がり、“総統!歩けます!”と絶叫。
そしてエンディングで流れるゆったりとしたジャズと何発もの核爆発の炸裂映像。
ドタバタ劇に笑った後、どう反応していいのやら複雑な気持ちになり、考えさせられる。
表じゃ真剣に地球の危機を叫びながら、結局そんなに考えてない人間の異常さと滑稽さ。

リッパー将軍の立てこもりに巻き込まれ、なんとか止めようとするイギリスのマンドレイク大佐。
元ヒトラー崇拝者らしき狂ったドイツ人科学者、ストレンジラブ博士(原題の『Dr.Strangelove ...』はここから)。
軍隊の筋肉おバカさん丸出しのタージドソン将軍(Turgidson;肥大化した息子)。個人的にツボ。
核爆弾“Hi,There!”に馬乗りになって「ヒャッホー!」と絶叫しながら墜落していくコング少佐。
などなど登場人物のキャラが濃すぎて、白黒とは思えないほど鮮烈な印象の映画。
それらの人物たちから、可笑しさだけではなく、切なさや悲しみ、恐怖も感じさせられる。笑いの懐が深い…。
役者の演技も凄まじく、観ているときは全然気がつかなかったけれど、
大統領、ストレンジラブ博士、マンドレイク大佐は1人3役で、
『ピンクパンサー』の警部役で有名なピーター・セラーズが演じていた。
あんな個性的な役柄を見事に演じ分けるとは、『ピンクパンサー』も見たくなった。

キノコ雲のシーンなどは、原爆資料館などでよく見る映像。コメディで使えば不愉快になる人も多いかも知れない。しかしこれはイギリス映画。
争いを好まず機関銃の使い方も分からないイギリスのマンドレイク大佐の目線で、
アメリカ側にもソ連側どちらにも立たない位置からの冷戦状態の核開発競争を上手く皮肉った作品だろう。
“国民を守る、平和を保つ”という使命を掲げながら、地球を自ら滅ぼす力を手にした、人類自体を皮肉っている。

自分は核問題については少しだけど勉強していて、核抑止力についても考えてきた。
そんな一見深刻な問題を、ここまで冷静に捉えてコメディにしてしまうとはキューブリック恐るべし。
ブラックユーモアの真髄をみた気がする。世界はいつでも、喜劇の舞台なのだ。

『時計じかけのオレンジ』も最高だったが、これまた名作。
“Ridiculous”(途方もなくばかげている)という単語が頭に浮かんできた。

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


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by yuzuruzuy | 2010-12-17 23:47 | 映画


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