『時計じかけのオレンジ』

スタンリー・キューブリック監督作品

近未来社会を舞台にしたストーリーは結構深刻。
暴力少年アレックスが仲間の裏切りによって逮捕され、
監獄生活から逃れるため、政府によって新しく開発された犯罪者矯正療法を志願する。
その治療とは患者に瞬きも許さずに見せ続ける暴力シーンの映像と、
薬で引き起こされる吐き気を結びつけることで、
嘔吐による肉体的苦痛によって暴力衝動を抑止するという暴力以上に非道徳的なものだった。
治療後、どんどん転落していくアレックスに同情する。
服役中にアレックスが懇意にしていた神父の
“非行は防げても── 道徳的選択の能力を奪われた生き物に過ぎない”
という抗議の言葉
科学によって人間の権利を奪ってしまうことの是非がテーマの作品なのだと思う。
同じく非人間的な手術で主人公が人間性をなくしてしまう『カッコーの巣の上で』を思い出した。
強制された善か?自ら選んだ悪か?
考える能力、選択する能力があってこその人間なのだ。


難しいテーマではあるけれど、ブラックジョークに溢れていて、
不気味なほどわざとらしい演技も笑えるし、比喩的な場面も多く、名場面満載。
真面目に狂って、真面目にふざけている雰囲気がたまらなく好き。
ウィリアムテル序曲と早送りの乱交シーンは『Survive Style 5+』でも使われてたな。

40年近く昔の映画とは思えないほどとにかく映像と音楽が綺麗だった。
もともと写真家だったという監督だけあり、ひとつひとつのシーンで照明や構図にハッとさせられる。
舞台の家具やオブジェや衣装もサイケデリックで近未来的。
音楽は乱闘シーンで鳴り響くクラシック音楽、特に重要な役割を果たすベートーヴェンの『第九』や、
凶悪な主人公が犯行中楽しげに歌う『雨に唄えば』が特に印象的で、
主人公が暴力を通して得ている快感を観る側も味わっている気になる。
さらに、アフレコなしの小型マイクによるほぼ全て同時録音した初めての映画らしい。
スローモーション、早送り映像や照明、音楽の使い方など今観ても斬新さはあるし、
いろんな作品に影響与えてると思う。

イギリスの名俳優たちの演技も見どころ。
主人公アレックス少年役のマルコム・マクダウェルは現在67歳。
スマートさや凶暴さ、コミカルな面など、この作品が持つ全ての要素をひとりで演じていた。
あとは、過去にアレックスが襲撃した家に住む作家が、復讐を企むときの演技。
狂いまくりで完全にイってるおじさん俳優の表情に、こちらは観ていて笑うしかない。
ラストシーンでのアレックスの恍惚の表情とともに、この作家役の表情も映画史に残る顔の演技だと思う。
その作家のイキ顔からのズームアウトで謀略仲間たちが映るシーンが絵画のようで特に印象的。
主人公のアップで始まる冒頭もそうだが、奥行きを使ってズームアウトする映像や、作家宅での水平にカメラが移動する撮り方が特徴的だった。
舞台『変身』の鬼才演出家、スティーヴン=バーコフが取調べの刑事役で出ていた。

ナッドサッド言葉という独特の言い回しを交えて語られる世界観はカルトっぽい。
当時は暴力事件を誘発する映画だと問題にもなったらしい。
そんなとこも含めて記憶に残る名作です。

今度、ちょうどよく小栗旬主演で舞台化もされるみたいなので、そっちも観たいな。
それから原作は小説なのでそちらも読もう。


時計じかけのオレンジ [DVD]

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by yuzuruzuy | 2010-12-13 18:00 | 映画


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