『箱男』 安部公房

 昨年読んで、まるで理解不能だったので再読。方舟さくら丸からハコつながりで箱男。通じるものがあれば理解が深まるんじゃないかと期待。
 結論、結局完全に分かることはなかった。途中まで箱男と贋の箱男の関係や、語り手すなわち箱男の“ノート”の記述者もはっきりしていたけど、突然、“ノート”が一人歩きを始め、記述者に話しかけるところから、何が何やら分からなくなる。『ソフィーの世界』で、主人公が作者の意図を離れてしまうように、読んでいるほうも異次元に連れ込まれる感覚。
誰が本当の箱男であったかをたずねるよりも、むしろ誰が箱男でなかったかを突き止めるほうが、ずっと手っ取り早い真相への接近法だと思うのだ。p187

考えてみてほしいのだ。いったい誰が、箱男ではなかったのか。誰が、箱男になりそこなったのか。p192
 言いたいことは分かるような気はするのだが…。覗く者と覗かれる者の関係が行ったりきたり。人は覗かれるのより覗く方を好むに決まっている。方舟さくら丸の船長もぐらも、箱男も、社会から隔離された空間に囚われたという点で共通するものがあり、
どちらにも侵入者や、贋の箱男という異物が入り込むことで存在が揺れ動いていく。そしてひとりの女をめぐって外界との接点を持たせようとする構図も似ている。
 後半にはさまれる夢の中のようなエピソード。ここだけの登場人物少年Dは、アングルスコープを通して世界を覗く感覚を覚える。
誰からも見返される心配がないと分かると、たちまち疚しさが消え、みるみる風景も変化しはじめる。風景と自分、世間と自分の関係の変化を、くっきりと自覚することができた。p194
 だから安部公房の作品はどれも、地下に作った方舟やダンボール、砂壁や他人の顔の仮面など、何か異質な隔たりの向こう側から世間を覗き込んでいるのだ。この作品をより深く理解するために、もっと安部公房という作家について知る必要がある。


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by yuzuruzuy | 2010-11-29 23:50 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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