『くっすん大黒』 町田康

 町田康デビュー作。

『くっすん大黒』
毎日酒ばかり飲んでいて妻に家出された男。むかむかとする怒りの矛先に、部屋に転がっていた不愉快な金属製の大黒。捨てよう、大黒を。自分は、大黒を捨ててこます。しかし、男はごみの分別や近所の視線を気にし始め、ゴミ捨て場に捨てる方法は却下。不法投棄使用と大黒を入れた紙袋抱えて町をぶらつき捨て場所を探していれば職務質問され、あきらめて友人の菊池に大黒を引き渡すことにする。
 菊池の紹介で古着屋で働くことになった男。次の日から菊池と1日交代で働くことになるが、そこで待ち受けていたのが、まったく働く気のないおばはん店員吉田と、客としてやってきたユオロップ狂いのおばはんチャアミイ。奇妙な2人のおばはんから逃げるように、仕事をやめてしまう。そこへ、男が十余年前に出演した映画のツテから、行方不明の芸術家上田京一なる人物の軌跡をたどるビデオ作品のリポーター役というインチキくさい仕事の依頼が来て、わけの分からぬまま撮影に参加していく。
 古着屋での吉田とチャアミイというおばはん2人のやり取りと呆然と眺める主人公の場面が面白かった。
「チャアミイは、とってもファンキーだからゥラスタカラーが好きなの。だから、ぅあたしのお部屋は、みんなみんなゥラスタカラー」と叫び、吉田のおばはんが頷くと、「ぅでもね」といって一拍おいて、一段と音量を上げて歌うような調子で、「ゥベッドルームは、まっっっっっっ白なのぉー」と絶叫したのである。医者へ行け、医者へ。
チャアミイの絶叫と冷静にツッコむ筆者(主人公)の目線の落差に笑った。文章に漫才や落語みたいなリズムがある。

『河原のアバラ』
 天田はま子という狂った同僚のせいで働いていたうどん屋を追いやられ、隠れた生活を余儀なくされた男。そこに知り合いのツテで遺骨運搬の仕事を頼まれ、そこから遺骨をめぐる小さな旅が始まる。主人公がうどん屋をやめる原因となった天田はま子という女がまためちゃくちゃ。チャアミイにしろこんなキャラよく考えるなぁ。でも大阪のおばはんが発想のベースになっているのは確かだろうと思う。

 どちらの作品も出だしの独り言がぶっ飛んでいて秀逸。
≪くっすん大黒の書き出し≫
 もう三日も飲んでいないのであって、実になんというかやれんよ。ホント。酒を飲ましやがらぬのだもの。ホイスキーやら焼酎やらでいいのだが。あきまへんの?あきまへんの?ええわい。飲ましていらんわい。飲ますな。飲ますなよ。そのかわり、ええか、おれは一生、Wヤングのギャグを言い続けてやる。────

≪河原のアバラの書き出し≫
 おおブレネリ、あなたのおうちは何処?わたしのおうちはスイスランドよ。綺麗な湖水の畔なのよ。やーっ、ほーっ、ほーとランランラン、って、阿呆か俺は。なにもかかるケンタッキーフライドチキン店の店頭で、おおブレネリを大声で歌わなくてもいいじゃないか。ね、ごらん、店員も客も、みな奇妙なものを見るような目をしている。やめてくれないか、そんな目でわたしを見るのは。わたしは狂人ではないのだよ。────
いきなりなにをぬかしやがるこの駄目人間は。と思うのだが、後から続くもっと狂った周囲の状況に中和されて、主人公は彼なりにまともに生きていて、どうしようもなくこんな状況に立っているのではないかと思わされてくるのだ。すべての不条理を受け止めるカフカの小説の主人公みたいだ。


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by yuzuruzuy | 2010-10-22 19:17 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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