『お葬式』

伊丹十三初監督作品

テーマはタイトルそのままお葬式。
マキノ雅彦監督の『寝ずの番』みたいにシリアスなテーマとのギャップを出すドタバタ劇なのかと思いきや、ぶっ飛びもせず、大袈裟な綺麗さもしない、本当の意味でのリアルさが追求された映画。小津安二郎の映画に近いものがある。そこに伊丹監督のユーモアとアイロニーがまざって、クスっと笑えてホロっと泣ける作品。

人が亡くなる。娘が父の死を知る。棺桶を手配する。遺体に会いに行く。遺体を納棺し家に運ぶ。葬儀屋と打ち合わせをする。葬儀のマナーをビデオで学ぶ。挨拶を考える。通夜が執り行われる。棺の前で親族でお酒を飲む。告別式までの準備をする。告別式が執り行われる。出棺する。火葬場で死者を見送る。火葬が終わるのを待つ。遺骨と一緒に家に帰る。親族で食事をする。親族がそれぞれの家に帰る。

そんなお葬式のシーンを客観的に映すことで、神妙な雰囲気の中での残された人たちの行動を細かく表現している。お葬式は悲しい。それはもちろんだけど、よくみると可笑しなところがたくさんある。正座で足が痺れて目立たないようにみんなが足を組みかえる。男たちが酒を飲んで話が盛り上がる一方、奥さんたちは解散のきっかけを作ろうとする。子供たちはいつもと違う雰囲気にはしゃぎまわる。耳の遠いおじいさんはひとり取り残され別の部屋で寝ていて、帰るときになって見つかる。

特に印象的だったのは吊られた丸太のブランコを宮本信子が立ちこぎするシーン。まだ全部通してみてはないけれど、黒澤明の『生きる』の名シーンを思い出した。その裏では夫役の山崎努が愛人と不貞行為。そこも伊丹監督なりのリアリズムなのだろうか。大滝秀治演じる叔父を嫌いながら、その兄(弟?)である故人を純粋に慕う尾藤イサオがいたりする。葬式は、普段見えない人間関係が見えてしまう場でもあるのだ。

他にも、火葬場での待ち時間の空気は、僕も実際の経験が忘れられないほど独特なものがあって、そこもリアルだった。棺桶が入っていく最後の別れの瞬間と、何をしていいのか分からない待ち時間。あの空間にしかないにおいとともにそのときの印象がよみがえってきた。
さすがに骨壷に骨を納めるシーンはなかったな。あの時間の、係りの人との「ここが咽仏です」などといった会話とか、火葬後の骨から伝わってくる熱やにおいの印象は、幼い子供にとっても強烈なものだ。その代わりのように火葬の様子を小窓から眺めるシーンがあって、点火係り(小林薫)が見る夢の話(結構怖いのでここには書かない)は、昔祖父から聞いた忘れられない話と重なる部分があって、考えさせられた。

葬式とは関係ないシーンでも、CM撮影のときの遠近法を使った撮り方や、カーチェイス風にサンドイッチを手渡すシーンに遊びゴコロが出ていて、わりと静かな本編のなかでカウンターパンチを喰らわせる威力があった。

『おくりびと』はまだみていないが、ここまで切実に響いてくるお葬式映画は他にないんじゃないかと思う。
続けて観るとさすがに気が滅入りそうなので、またこの映画も見直しつつ、他の作品と比べてみたい。
もちろん他の伊丹作品もチェックしよう。

伊丹十三DVDコレクション お葬式

ジェネオン エンタテインメント


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by yuzuruzuy | 2010-10-05 00:44 | 映画


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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