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THE SONGWRITERS 佐野元春×山口一郎 ①

今回はサカナクション山口一郎

恒例の佐野元春による朗読
『enough』
曲として聴いたこともなかったので、メロディのイメージもなく、言葉だけですっと入ってきた。
北海道出身のエッセンスなのか、佐野元春もコメントしたように、宮沢賢治の詩を現代的にしたような、都会的なのに農村の匂いがする歌詞だった。
佐野:僕たちの生活の中の、リアリティについて語られた詩かなと、僕は思ったんですが。

山口:僕が曲を作るときに、いつも心がけてるのは…なんか僕の日常の中にあることを、必ず嘘偽りなく言葉にしたいなと思っているんですよね。なので、この『enough』を書いていたときの心境って言うのは、札幌から東京にでてきたばかりのときで、今までとは比較にならないほどのたくさんの人が街にいて、いろんな人の思惑が、なんか僕の中に、入り込んできた気がしたんですよね。で…本当の自分て言うのと本当のじゃない自分て言うのが、よりくっきり分かれてきてて、それを何かこう言葉にして、頭の中を言葉でデッサンする感じっていうの…

佐野:あぁ(溜息)…うん、うん。

山口:で、書いていった詩ですね。歌詞と言うよりかは、詩を書いてる気持ちでしたね。

“生活の中のリアリティ”というキーワードがばっちりはまって、この詩ができたときの環境を引き出す佐野さん。相変わらず話を引き出すのが上手い。それだけ歌詞の深いところまで味わっているのだろう。
頭の中を言葉でデッサンする、かぁ…良い表現。


学生運動をしていたぶっ飛んだ父親に、スパルタで本を読まされたり、自己形成について厳しく求められたりしながら育ったという山口一郎。
佐野は山口の書く詩と文学との関係について、自分の見解を交えて質問する。
ここからは特に興味深かった。
佐野:山口さんのライティングを、僕なりに感じてみると、例えば寺山修司とか、或いは宮沢賢治とか、そうした作家の感受性と…同じような、…ものを感じるんです。この辺の作家について、どうですか?

山口:ある独特の、日本独特のセンチメンタリズムというものが僕はあると思ってて、僕の周り、当時小学校か中学校ぐらいのときに、同じセンチメンタルを感じる仲間が、いなかったんですよね。で、僕がこう自分の中にあるセンチメンタルを、唯一、比較できたのが文学の中だけで、宮沢賢治さんもそうだし、僕は短歌や俳句も好きで、石川啄木さんの、あのー、なよなよしい(笑)短歌とかも、(省略)。…あと、種田山頭火さんの、自由律俳句というもの、その、俳句というフォーマットを壊している時点で、すごく僕はロックだなと思ったし、なんか、生き方自体も、すごく感銘できたというか。

日本独特のセンチメンタル。これかなりのキーワード。
作家を“さん”付けで呼ぶところに敬意と親しみの両方が表れていて、
とても面白いなぁと思って聞いていた。
しかも最近知った自由律俳句が出てきて“つながった感”。山頭火さーん!


佐野さんも山頭火が好きらしい。
Q.山頭火のどんなところが魅力か?
山口:要するに見てる景色であったり、その時間を、そのまま言葉にしてるんですよね。

佐野:あぁ、ずーっと放浪してるから、見たままを、見た時間に、自由に書いてるって言う印象がある。

山口:“分け入っても分け入っても青い山”という句があって、それは、どこまで歩いても、山だらけだと(ニッと笑顔で)、いつ自分がたどりつけるのか、なんかそういうことを、句にしているんですけど、なんか、情景描写なんだけど、自分の人生と比較できたりするし、自分の感覚とそれを、天秤に掛けたりするというか、それがすごく僕の、パーソナルな部分に響きましたけどね。

瞬間瞬間のつぶやきや目の前の景色を言葉にして、それが他人の人生と重なりあう力を持つ。
誰の言葉にでもなる自分の言葉。


Q.詩を書くときのアイディアはどこから浮かんでくる?
とりあえず曲を書こうとしない。
山口:お風呂にこう(手で蛇口をひねる仕草)お湯を溜めて、すりきり一杯までお湯が溜まって、溢れる瞬間あるじゃないですか。それをなんかこう、日常生活を送りながら待つんですよね。

佐野:あぁー。

山口:そこを見極めることと、どうしたらこう自分の頭の中の引き出しに、いっぱい感情が溜まるかって言うのを、考えること。

佐野:つまり自分の中にイメージが満ちてくるまでとにかく待つっていうこと。

これまた素敵な比喩。その浴槽はいったいどのくらいの大きさなのだろう?
自分の浴槽には栓がされてなくて、漏れているかもしれない。
感情が溢れるくらい、いろんなことから感じて、溜めていきたいな。


浮かんでくるイメージをメモしたり残しておくのか、放っておくのかという質問に、
山口一郎は放っておくと答える。
山口:吐き出しちゃったら、僕、興味なくなっちゃうんですよね。

佐野:はぁー(深くうなずく)

山口:残すと、それでいらなくなっちゃう。だから、鮮度が大事なんですよ。僕の頭の中に出てきた、その瞬間が、いちばん、気持ちいい(ニカッ)。

鮮度が大事…サカナクションと関係あったりして。


『アルクアラウンド』と『壁』の歌詞について(省略)
それぞれ、そのときの状況や、その時どきで得た感情がこもっている歌詞だった。


Q.好きな言葉
 夜

Q.嫌いな言葉
 愛

Q.好きな映画
 『回路』 『オー・ブラザー!』

Q.女性から言われてうれしい言葉
 状況によるけど…かわいいね、じゃないっすかね…(聴講生見て)失笑?(笑)
──ミスチル桜井と同じ(笑)なんだかんだでいくつになっても褒め言葉はうれしいもんな。


話題はソングライティングをテーマにした、いつもより抽象的な話へ。
ここまでの対談でだいぶ見えてきたように、今までのソングライターたちと比較して、
より文学的な感覚を持った山口一郎氏にだからこそ聞けることかもしれない。
佐野:これまで、この番組では、主にライティングの技法について、お話をうかがってきたんですね。というのは、そのー、ソングライティングの、技法について語る場が、あんまりないなという自分の実感があって、是非、同業のソングライターたちを招いて、どうやってみんな、詩を書いてるのって言うことをうかがってきたんですけども、(より率直な口調で)僕ね、山口さんとは、ライティングの技法よりも、もうちょっと抽象的な事を話し合ってみたいんですね。 なぜ、僕らは詩を書くのか?という、本質的な事について、すっごく抽象的な問いなんだけど。

相手の人間性や興味のツボまで深く観察していないとできないストレートな本質的な問い。佐野さんナイス。
あなただから聞くって言う前振りも本音で話してもらう上で大事だな。
それに対して山口氏もすぐ答えはじめる。
山口:なんか、どういう風に生きるかとか、何を大切にするかとか、そういうことを日常で考えていると、必ずたどりつくのが、音楽を作ることなんですよね。ということは、僕自身その、生きるということであったり、生活するということで、なにかこう、溜まっていくものがあって、それをこう、みなさんがカラオケに行ってストレス発散したり、お酒を飲んだり、友達と旅行に行ったりするような、発散の場として、僕は音楽があるのかなぁって、詩を書くことがあるのかなぁって、思ってるんですけどね。



Q.サカナクションにとっての歌詞とは?(要約)
言葉を伝えるために、どういうサウンドを取り入れるかという戦略的なところがある。
ネットやツイッターなどで情報が簡単に手に入る時代。そんな時代だからこそ、戦略ということ自体が、表現として、成立するようになっているんじゃないか。伝えたいことを、どうやったらより多くの人に伝えられるのか。
それが、サカナクションでは、山口一郎の言葉を伝えるために、どういうサウンドが今の時代に合っていくのか。それがひとつテーマとしてある。

これかなり大事なことだ。言いたいことがあるだけじゃだめ。大量に流れ出ている情報の波に流され沈んでしまわないように、届けるか、その戦略までしっかりと考えること。


Q.最後に、大衆性とサカナクションの音楽について。(要約)
ロックというフォーマットひとつとっても、精神論としてのロック、ジャンルとしてのロックなどいろいろな捉え方がある。捉われ方が多くなった分、それを壊すことが難しくなっている。それがひとつのつまらなさになっていたり、飽きられる事の要因になっている気がする。だから、自分が今いる立ち位置の、フォーマットを壊していくことを心がけている。



サカナクションはこの番組で取り上げられると知ってから聞き始めたけど
フジファブリックのようなヘンテコなサウンドと歌詞の文学性がなかなか好きな音楽です。
この対談を思い起こしつつもっと聴いてみよう。センチメンタルを感じながら。
山口一郎は歌詞づくりはそのときの感情を大事にするかなり感覚的な人間に見えたけど、
そんな自分を客観的にみてこうして言葉にできる面も持っているのだと思います。
佐野元春とも感覚が似てるのか、深いところまで話が広がって、とても30分とは思えない濃い内容でした。
佐野元春の相槌とコメント、気の利いた質問。
山口一郎の感情を真っ直ぐに表そうとする言葉と、時どき佐野さんに向けるニカッっという笑顔。
対談する2人のやりとりにこれまで以上に引き込まれました。

次回で2ndシーズン終了。まだまだ聞きたいなぁ…。
フジファブリック志村が生きてたら出て欲しかったなぁ。

サカナクション山口一郎さん。
最初はBase Ball Bearのボーカルに似とると思ったけど、
録画でずっと見ていたら、だんだんと、
頬のこけた劇団ひとりに見えてきました。
by yuzuruzuy | 2010-09-13 17:13 | 表現


つまらない、面倒くさいを、面白く。


by yuzuruzuy

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