『江戸川乱歩傑作選』 江戸川乱歩

江戸川乱歩、初めて読んで、衝撃だった。

≪二銭銅貨≫
 同じ部屋に下宿していつも賢さを競っている貧しいふたりの男。そのうちの一人が、たまたま机に置いてあった二銭銅貨から、世間を騒がせている泥棒事件で盗まれた金の在り処を示す暗号文を見つけた。驚かすため相方に黙って一人で推理して、男は見事にお金を手に入れてくる。しかし、そのお金は本物そっくりのおもちゃの紙幣で、それらはすべて相方が仕組んだいたずらだったというオチ。いたずらにしては度を越した、お見事なトリック。自分の推理を一通り自慢した後、それが相方の仕業だったという事実を知らされた男の絶望感に共感。解けただけでも十分賢いよ。といってあげたくなる。

わたしだ。
おまえだったのか。
暇をもてあました、賢い貧乏人の・・・・遊び

そんだけ賢いなら、働けよ。と言いたくなる。


≪二廃人≫
 夢遊病が原因で、人殺しまでしてしまった過去を持つ男。夢遊病だったのは実は親友の嘘から出た思い込みで、
その親友が犯した殺人をなすりつけられていたのではないか?湯治の宿で出会った、戦争で顔に傷を負った男が、そんな推理をした。どこか親しみを持ってしまうその男が、自分を夢遊病ではないかと言い始めた親友だった。隠された事実がどんどんと迫ってくる心理的怖さがある。読む側に考えさせて最後まで答えを出さないところがまた怖い。こういう怖さもあるんですね。


≪D坂の殺人事件≫
 明智小五郎が登場。殺人事件のふたりの目撃者の、障子の隙間から見た犯人の着物の色についての証言はまったくの逆。“物質的な証拠なんてものは、解釈の仕方でどうにでもなるものですよ。いちばんいい探偵法は、心理的に人の心の奥底を見抜くことです。”なるほど、探偵小説は、心理小説なのですね。見えないところに答えはある。


≪心理試験≫
殺人犯だとバレないために心理試験について徹底的に調べ、綿密な準備をして試験を受けた犯人。怪しまれないように、わざと不用意に見せかけた答えを出すなどして、犯人ではないことを完璧に示したつもりだった。しかし裏をかいたそのさらに裏を読んだ明智小五郎の推理で、犯人は降参。心理試験がどういうものかについて詳しく書かれていて面白い。


≪赤い部屋≫
 異常な興奮を求める男たちが集う「赤い部屋」。一人の新参者が、これまで犯した殺人について語りだす。これも、大掛かりないたずら。ラストにかけてのドッキリの応酬に、脳みそがぐるぐる回転。作り話である小説の中における、さらなる作り話とはいえ、絶対罪を問われない殺人だなんて、怖ろしいことを考えつくものだ。


≪屋根裏の散歩者≫
 自室の押入れで屋根裏への入口を見つけた男が、思いつきで自殺に見せかけた殺人を犯す。証拠もない事件から、またしても明智小五郎が犯人を突きとめる。明智小五郎と知り合いになってしまっていたことが男の運の尽き。それまでの付き合いで匂わせていた男の犯罪嗜好と、男が事件が起きた当日から煙草を吸わなくなったというヒントだけで、一気に推理が進んでしまう。
 明智小五郎にかかれば、解けない事件はない。ここまで鋭く人間観察する人を友だちに持ちたいような、持ちたくないような。


≪人間椅子≫
 女性作家の家に届いた手紙。それは椅子の中に入ることに快感を得てしまった男の告白だった。読み進めるうちにどんどん恐怖が女性作家のもとへと迫ってくる。恐怖が極限まで来たときに、もう一枚の手紙でオチが告げられる。安心というか、全身のチカラが抜けてしまって、あとからまたゾクッとする感じ。何ともいえないような感覚。やっぱりドッキリテイストが入ってる。しかしすごい妄想力。


≪鏡地獄≫
『乱歩地獄』で映像化された作品。映画とは結構違った。鏡の球体の中に入ったら何が見えるのか。気になるけど、これ読んでたら、少し怖くなりそう。


≪芋虫≫
 これも『乱歩地獄』にあった作品。文字にするとまた違ったおどろおどろしさがあった。映像で先に見てしまったので、先のイメージに捉われてしまった。しかし、生々しい文章はもう、さすが江戸川乱歩としか言いようがない。


 読んでいて、脳みそが動かされるのが分かるくらい、どれもいろんな仕掛けがある。謎が解ける快感もあるのも自分にとっては新鮮な読後感。短いぶん、深く濃い。思考の底なし沼、乱歩地獄。同じく脳内ぐるぐるな安部公房を読んどったおかげで割とすっと入り込めたのかと思う。


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by yuzuruzuy | 2010-06-14 07:06 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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