『燃えつきた地図』 安部公房

 安部公房文庫はこれで7冊目。古本屋で買い積んでいた分もだいぶ消化してきた。安部公房以外だとまだまだ山積みだけど。
 最初は探偵モノみたいに、失踪者の調査を依頼された興信所員主人公が、手がかりを求めて周辺の人物に関わっていく。しかし、いくら捜査しても、手がかりはつかめずに、反対に重要な人物達が次々と死んで、わずかなヒントを失っていくばかり。だんだんと何をしているのか分からなくなってきて、失踪者探しが、いつしか失われた自分探しになってしまう。
 失踪者というキーワードで、『砂の女』を思い出す。今回は探す側、舞台は都会という砂漠。失踪者と捜索者の間になんだか表裏一体なモノを感じる。
 興信所の仕事柄か、主人公目線の文章は些細な仕草や普通なら見過ごす風景まで事細かに観察されていて、それなのにそこから手がかりが何も出てこない。結局何もつかめない、無駄に説明的で複雑な文章。読んでいる感覚はカフカの『城』に近かったと思う。
 他人から関心を持ってもらいたいがために嘘を繰り返して主人公を振り回し、最後には嘘でなく本当に自殺してしまう失踪者の部下の田代や、ところどころ出てくるストーリーには関係ない人物達からも都会の孤独感がにじみ出てきていたりする。
 地図も持たずに孤独にただ点と点を移動する日々を生き、他人との間に見えない壁をつくった都会人は、失踪者とほとんど変わらないのではないか。
p.4 題辞
都会 ━━━ 閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくり同じ番地がふられた、君だけの地図。
だから君は、道を見失っても、迷うことはできないのだ。

p.297
「この辺を、せっせと歩いている連中だって、考えてみれば、一時的な行方不明人みたいなものだな。一生か、数時間かの、ちがいがあるだけで・・・・・・」
 読後に残る巨大な不安は答えの見つからない現代社会のシンボル。これが安部公房作品の醍醐味なのかな。


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by yuzuruzuy | 2010-02-08 11:51 | 読書


つまらない、面倒くさいを、面白く。


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